Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

NYの定番

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例年より約3週間早く、只今ニューヨークに滞在しています。80%は定番、20%は新たな分野の新しい情報を収集すべく、定番+新鮮を心掛けて毎年の訪問はかれこれ16年になります。 

さて、今回は定番の部分をひとつ紹介させていただきたいと思います。宿泊するホテルについてです。ヒルトンミッドタウン、実は父とともに初めて米国訪問した15歳の時と同じホテルです。1972年エルビスがマディソンスクエアガーデンにて公演を行った際はこのホテルの最上階をすべて借り切ったことは有名です。デジタルマーケティングの最大のイベントであったadtechもここでミレミアムのころ何年か開かれました。

しかし、躯体はもう50年以上経過しました。ということで館内はシステムも含めてつい最近大改装されました。ニューヨーカーの友人からなんでそんなダサいホテルにいつも泊まっているのかと聞かれ、推薦してもらったソーホーのホテルに一度滞在したのですが、また、戻ってしまいました。理由はロケーションの良さ(どこでも歩きと地下鉄)、机の大きさ(仕事のしやすさ)、そして無形の思い出(父親とともに宿泊)。あとはやはり価格とサービスのバランスでしょうか。ホテル業ともっと関係があればきっと違ったと思うのですが、16年間を振り返ると自分にとってはまさにニューヨーク出張の定番と言えます。

ビジターには館内・周辺の詳細情報は居心地に直結します。今回、いつも助かっていた朝刊サービスがなくなりました。他の人々のホスピタリティはともかくフロントの対応は相変わらずとても良いとは言えません。

ふと突然、江戸時代の旅人にとって定宿は今よりはるかに深い思いがあったのではと頭をよぎりました。

ハイパーアダプション

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自動運転、ドローン、3Dプリント、半自立型のヘッドレスロボット、VR、そして何よりも身近にあるスマホの進化に接するうちに最近では何事にもそんなに驚かなくなってしまいました。今の消費者はハイパーアダプションになりつつあります。

一方でAI、センサー、位置情報、画像認識などのデジタル技術が同時に高まることで加速度的に新しいテクノロジーが生まれるようになりました。今のビジネスではわずかなコストでイノベーションが可能となり、多くの人が参加しています。

ハイパーアダプションの時代になると消費者の関心→購入意志決定→行動までの期間が短くなります。顧客の選択の自由はさらにコミュニケーションの承認にまで広がります。情報過多によってどのブランドに通知を許可するのか、つきあう相手を絞ろうとします。

これはもう広告ではなく、関係性の競争です。洗濯機についたアマゾンダッシュは消費者の洗濯という行為に伴う関係を所有しているのです。今までのマーケテングであれば、「お客様にあう商品を何百種類をそろえています」だけでよかったのですが、これからはそれまでの履歴を把握して、「お客様の好みを理解しぴったりのものを提案します」となっていくでしょう。

ハイパーアダプション時代においてブランドが顧客との関係性を構築したいならば、顧客がブランドに求めるサービスをまず考えて実行しなければなりません。

進化を超える発想

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先日ジムでトレーニング中にシューズの底がはがれてしまいました。もう、10年以上使っていて靴底がはがれるのもこれで3回目です。修理をしてまた使いはじめたのですが、家族からは耐用年数がとっくに経っているから新しい靴を買ったらと言われてしまいました。ということで週末にスポーツショップで新色ニューシューズをゲットしました。

履いてみて驚いたのは軽さと弾力性、それに加えてのフィット感です。見かけはほとんど変わりませんが、10年の進化を感じずにはいられません。スポーツシューズの世界を見る限り、消費者の嗜好の変化に対応するだけでなく、スポーツの広がりを創造し、3Dプリンターをはじめとした新たな製造を生み出し、デジタルのアプリやリアルなスポーツクラブを通じたエンゲージメントを展開しています。

一方、テレビの世界はどうでしょうか。確かにテレビのハードウェアは今も進化を続けています。放送形態もバリエーションが増えました。しかし、テレビ広告は革新どころか消費者の変化についていけていないと思います。長さひとつをとってみても15秒、30秒がほとんどで50年前と変わりません。米国では最近「テレビ広告がテレビ広告を殺す」という考えがあるようです。

コマーシャルの量を含めて従来のテレビ広告のあり方を新しい発想で作り直す動きが始まっています。

筋金入り

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広告で消費者にリーチすることがだんだん難しくなっている中、従来にも増して工場見学やイベント等にブランドの関心が高まっています。

ロンドンから電車で2時間あまりバーミンガム郊外ボーンビルにキャドバリー社の工場と元の本社があります。確か「チャーリーとチョコレート工場」という映画のモデルにもなったところです。日本ではキャドバリー社のチョコレートになじみがやや薄いのでご存知の方も少ないかもしれませんが、ここに1990年に作られた年間50万人が訪れるキャドバリーワールドと呼ばれる施設があります。

工場見学ツアーは予約制、料金は大人16ポンド、4歳以上の子供12ポンドで有料です。まず、カカオを知るうえからアステカのジャングルからツアーはスタートします。ディズニーランドまでを彷彿する楽しいアトラクションや映像を交えながらの行程に工場ラインの見学が組み込まれています。さらにデモンストレーションエリア、ボーンビルエクスペリエンスと続きます。生チョコの実演や来場記念となるグリーンバックの合成写真コーナーもあります。もちろん、工場ライン以外は撮影も自由です。トータルで2時間のツアー以外には創業者ジョン・キャドベリーのミュージアム、屋外の遊戯施設と4Dのチョコレート体験劇場、手品や腹話術などのイベント会場も随時開催されています。ここは工場見学の枠を大きく超えたまさにブランド体験施設です。

バーチャルな工場見学までもが実現できるようになった今、ブランド体験の幅は大きく広がろうとしています。キャドバリーワールドはその原点を私たちに教えてくれます。

21世紀タイプ

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21世紀タイプの車と言えばどこのメーカーを思い浮かべますか。

高級スポーツカーの形はどこも似たり寄ったり、電気自動車のテスラも見かけはあまり変わりません。

ところがテスラはディーラーを持っていません。会社所有のショールームに行って試乗し、オプションはオンラインで注文します。ふつうの車ならばリコールの恐れがあった連続炎上事故の際は、ソフトウェアを変えて高速での車高調整を1インチ高く設定することによって4か月で問題解決に至りました。

それよりも驚きなのはバッテリー式電気自動車の単純な技術を使うことで車両組み立ての労働コストを極めて低くして、その結果従業員一人当たりが創出する市場価値はGMが24万ドルに対してテスラは290万ドルとのことです。業種は違いますが、創業20年足らずのスポーツ・フィットネス企業であるアンダーアーマー3Dプリンターで製造方法を革新しながら、ヘルス&フィットネスのアプリサービスを開始、マーケティングにもSNSを巧みに活用しています。

こうした企業にはいくつかルールがあるようです。例えば、

研究開発のルール=迅速にやる、研究所を出る。
製造のルール=センサーの声を聞く。
リーダーシップのルール=崇高な目的を明確に伝える。
雇用のルール=企業文化を大事にする。

などです。昔から企業の資産と言えば、人・モノ・お金・情報と言われてきました。21世紀タイプの企業は自覚の有無にかかわらず、従業員がその会社の資産の大半を担っています。優良資産かそれとも不良資産かも従業員にかかっています。ますます人的労働、情報、お金が簡単に、安く、即座に行き来する世界が実現していくなかで、常識にとらわれない発想、創意工夫、オープンな姿勢が求められる所以です。

成功を阻む要因

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デジタルはごはん、データは卵焼き、デザインは幕の内、ビジネス戦略を弁当にたとえると今はこんな風に言えるのではないでしょうか。近く東京で開催される大きなビジネスカンファレンスも「デジタル×データ×デザイン」がテーマのようです。

すでにデジタルを組織に取り入れていない企業はもはやないにもかかわらず、成功している企業が少ないのはなぜでしょうか。360iのCEOは、組織にデジタルを取り入れた場合でも多くの企業が従来型の慣習・慣行(予算、人事、働き方)に固執していること。データや分析の精度が向上して高い効果を出せるようになった一方で企業リーダーや幹部が蚊帳の外になりやすいこと。デジタルで先端を目指そうとするあまり若手に責任を押し付けたり独立した専門チームに任せきりにすること。と述べています。皆さんにも心当たりがきっとあるのではないかと思います。

もちろん成功の道は必ず開けるものではありませんが、まずやるべきことはあります。それはデジタルをビジネスに成功をもたらす戦略的要因として位置づけると同時に多面的な生態系と捉え直すこと。実行面では目標と狙いを明確にして最適な人材を起用し、創造的発想力や意欲を追及する企業風土をつくることが不可欠です。

そうすれば、どんなビジネスにおいても新たなチャンスを作れるはずです。

アンチ・ダークサイド

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昔からジャーナリズムには「流血沙汰はネタになる」という意識があるそうです。今も確かに人は良いニュースよりも悪いニュースのほうが記憶に残りやすいのはきっと防衛本能に根差しているからだと思います。こうした本性はインターネットの世界でさらに拡張されてしまいました。

毎月2億人のユニークアクセス数を持つハフィントン・ポストの中に「効果のあること(What's Working)」という公式プロジェクトがあります。ここでは創造的な問題解決や価値あるロールモデルの紹介だけを行っています。創業者であり、ジャーナリズムを変えたアリアナ・ハフィントン氏自身は「ポジティブなコンテンツは社会にとって良い効果を持つ」という強い信念を持っています。青二才のようなもしくは理想家すぎる考え方かもしれませんし、優等生的なコンテンツばかりだと息がつまる気もしますが、人が心底望んでいるコンテンツは人の不幸より人の幸せです。

ハフィントン・ポストの調査によれば「人は気分が明るくなる記事や、解決策が提示された記事をシェアしたがる」そうです。ビジネスやブランドにとっても鉄則です。