Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

データとプライバシーの新潮流

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2年前の夏、米国広告業界の大きな話題は初めてTVの広告費がデジタルに抜かれる広告革命でした。昨年はデジタルの巨人たち、GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)のデジタルマーケティング業界での寡占化について、そして今年はデジタル広告の信頼性、正確性、効果測定への猜疑心が消えない中でEUの一般データ保護法が成立し、広告と個人情報保護の両立がクローズアップされています。

データとプライバシーはもはや一企業と消費者にとどまらず、国や地域、社会全体の問題と言えます。ルールと方針が変わったことで、今後ブランドはできるだけ直接的に消費者からデータを集める方法を模索するようになります。ファーストパーティデータの利用と重要性が高まることは間違いないでしょう。データの取得の巧劣が優れたマーケティングができるかどうかに直結する可能性があります。

実はインターネット登場以前からロイヤルティプログラムによって顧客情報を集めるやり方は存在していましたが、スマホとアプリの普及によって飛躍的に進化しました。航空会社、金融、外食など多くの業種でポイント獲得の引き換えに顧客情報を収集し、マーケティングに活用することはどこでも当たり前となっています。製造業においても顧客をコミュニティ化して、例えばナイキやレゴなどは新商品をファンのアイデアをもとにデザインし、それを限定販売したり、一番のファンに優先販売するやり方で成功しています。ここでも企業は顧客情報を利用してさらにPDCAを回しています。

一方で消費者は自分のデータを保護したいというニーズをより強く持つようになりました。オンラインのサービスに個人情報を提供しないためにサブアドレスや捨てアドレスを作っている割合が30%近いという調査数字もあります。プライバシーやセキュリティの面でビジネスを信頼するかどうかの業界別スコアで言えば、広告・マーケティングは最低レベルです。

ブランドは顧客のデータとプライバシーを再認識するとともに、顧客に不安やストレスを与えないこと。データの提供や同意によって得られるメリットについてよりわかりやすく説明して理解を得ること。この2つを同時に行わねばならない時代に入ったと思います。

 

都市=東京を想う

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何年か前、なんとも懐かしい写真集に出会いました。それは「オリンピックのころの東京」。(岩波フォト絵本) 1964年のオリンピックが小学1年生だった自分自身の記憶にはほとんどない写真ばかりです。それでも都電やオート三輪が走り、木造2階建ての家々が都心の大通りに面してたくさん建っていた頃、街の匂いやほこり、看板やお店の思い出が蘇ってきます。当時は世界の大都市と比べるには至らなかったと思います。山手線にウグイス色の車両が登場するかしないかの頃、東京はオリンピックによって大きく変貌しました。

あれから54年が経ち。2年後に2回目のオリンピックが東京で開かれます。今度はどんな風に東京は変わるのでしょうか。都市をブランドとしてとらえるならば、行きたい、住みたい、働きたい、と思えることはブランド力につながります。知事はより安心で、安全な都市「セーフ シティ」、誰もがいきいきと活躍できる都市「ダイバーシティ」、そして、世界に開かれた、環境・金融先進都市「スマート シティ」、この3つのシティの実現を目指すと宣言しています。ロンドンは前回のオリンピックを梃にして世界都市力ランキングを6年連続1位にしました。東京は現在3位、「文化・交流」、「交通アクセス」、「経済」、「研究開発」、「居住」、「環境」の6つの指標でトップはひとつもありませんが、大きな弱点もないようです。東京生まれの東京育ちで田舎を持たない自分にとって東京が世界一になることはもちろん嬉しいのですが、どうも何かが抜けているような気がします。

今、地球上で3つの大きな力(テクノロジー・グローバリゼーション・気候変動)が人々に大きな影響を与えています。不安や負の部分をいかに希望とプラスに変えられるか、これからの都市は「レジリエンス 強靭さ」、自発的治癒力を高めていく必要があると感じています。例えば、リノベーションがしやすいこと、エネルギーや交通の最適化がはかれること、住んでいる人々のネットワークがあること、そして愛される東京を想う強い心です。

それにしても2020年の夏、最高気温が40℃とならないことを祈るばかりです。

 

いつの時代も同じ

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今年は明治元年(1868)から起算するとちょうど150周年、そして平成が来年終了し、元号が改められます。日本人にとっては西暦とは違った日本の歴史を感じる瞬間でもあります。平成という30年間はちょうど一世代が入れ替わる期間と重なります。

ちょうど昭和と平成が半分半分の自分たちの世代(60)と親の世代(90)、子供の世代(30)、そして今新しく生まれてくる孫の世代(0)、さらに親の世代の2世代前までさかのぼるとなんと明治維新となるわけです。こうして考えると1世代30年として明治維新から数えて6世代目が始まろうとしています。

先月ニューヨークのデジタルエージェンシーの知人と昼食を一緒に食べていたら、「#ME TOO」の勢いが「Still Strong いまだに収まらない」と言っていました。テレビではニューヨーク州の検事、ネットワークテレビ局の有名人気ニュースキャスターやアンカーのハラスメントの報道が盛んに流れていました。今年のミスアメリカのコンテストでは水着審査を行わないそうです。特に50歳代以上の男性の倫理観と新しい時代の現実がコンフリクトを生んでいるという記事を読んでなるほどと思わざるを得ませんでした。

もし明治維新の時代に生まれていたら世の中の変化についていけただろうか? 歴史はあとから振り返るとなんてことないのですが、自分が仮に当時の武士だったら古い考えに囚われて時代に取り残されたのではないかと思ったりします。また、昭和の初めに生まれて戦争にいかねばならなかったら何を思っただろうか? きっと平和であってほしいと心底願ったに違いありません。人間の求める普遍的価値観は変わらない一方で、世代間ではモノの見方や考え方の常識が異なるのはいつの時代でも一緒、世代間のコンフリクトを経て若い次の世代がよりベターな世の中を作ることは歴史を見れば明らかです。これからも次世代の育成と応援を続けていきたいと思います。

再び心に刻む

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ちょうど今から20年前の1998年5月、プレジデント誌に村田昭治の最終講義「マーケティングの神髄」と「自らの生き方」を語ると題した記事が掲載されました。大学時代の恩師村田昭治先生が慶応義塾大学教授を同年3月に退任なされたタイミングでひとつの集大成的なインタビューだったのではないかと思います。

先生はマーケティングの神髄は4つあると述べておられました。4つとはイノベーション、個性、ローコスト、ポリシーです。中でもイノベーションの重要性を第一にあげられ、これは技術に限ったことではなく、あらゆることに通じるものであると強調されています。そして、人より先に何かに挑戦してみる、少し難しいことであっても挑戦してみる情熱を持たねばならないと我々に教えてくれました。

また、先生は「上手く生きるより良く生きろ」とよくおっしゃいました。かつて映画監督の鈴木清順さんが脱サラしたあと北海道でとてもおいしいと評判の牛乳を作る牧場主に何故そんなにおいしい牛乳を作れるようになったのですかと尋ねたそうです。牧場主は「美味しい牛乳を作ろうと私自身思ったことはありません。ただ、牛たちに、おい、タロウ、元気か?ハナコ、今日も幸せか?と毎日聞いています。きっとうちの乳牛たちはみんな幸せなんですよ。だからおいしい牛乳を出してくれるのでしょう。」この例え話の如く人を想う気持ちを失ってはいけないという人としての原点の教えでした。

20年ぶりに読み返してみると当時の世紀末の状況と今との違い、その後に起きた大きな事件や人々や社会の変化、新たな課題等はありますが、マーケティングや人の生き方のエッセンスは変わっていないと改めて感じます。むしろ、イノベーションや社員の幸せといったテーマはより大きくなっている気がします。時を経ても色あせない言葉には力がありますね。先生がハーバードで学んだ「wisdom can not be taught」の深い意味を再び思い出すことができたのをはじめ、自分が年齢を重ねたせいか、当時よりもむしろひとつひとつの言葉をじわりと心に刻むことができました。

 

 

 

 

データと向き合う意味

 

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マーケティングにおいてデータはずっと昔から活用されてきたことは言うまでもありません。このところデータがさらに注目されているのはデジタルによって今までできなかったあらゆる事象がデータ化され、分析を通じて効率を高めたり、インサイトを発見できたりすることへの期待です。そして、AIの登場によってさらにデータの重要性が増しています。

今回は現代のデータについての課題と特徴、マーケターにとってこれからの付き合い方について述べることにします。まずもって現代のデータと昔のデータとの違いは量の問題です。1ギガバイトをレンガ1個とすると毎日万里の長城が14個作られる量が生まれているとのことです。これは多くの方がすでに語っているとおり、あまりに多すぎます。次に横たわるのがフォーマット不統一の現状です。多種多様なデータを持っていてもそれぞれAIにすぐには読み込めません。アンケート、動画、SNS,IOT、位置情報、、。3番目は速度の問題です。トランプ大統領のツイートは数秒で全世界のフォロワーに伝わります。データはすぐに更新されて古くなっていきます。そして4番目はフェイクニュースにみられるはたしてデータが正確かどうかあいまいであることです。データ量が増えた分、不正確なデータも世の中に多く流通しています。最後にデータの寡占化の問題があります。グーグル、アマゾン、フェイスブックをはじめ消費者のデータを一部の巨人がグローバルに独り占めしています。こちらは潮目が変わりつつある気がしますが。

こうした中、企業は自社のマーケティング活動でどのようにデータと付き合ったらよいのでしょうか。まず、自身にとって重要なデータを見つけることが重要です。データでAIを鍛えていきながら一方でデータのスクラップ&ビルドをしていくことになるかと思います。見つけるまでやらねばなりません。もっとも重要だからです。また、今後は機械学習しやすいようなデータの分類の仕方をいかにつくるかも検討する必要があります。スピードに対応するにはOne to ManyからMany on Oneの考え方がより主流になるでしょう。「アルゴリズムを作る側にいるか、それをただ利用するだけか、どちらもありか、」それぞれの企業が真剣に考える時期に来ていると思います。

ネットTVから見えるもの

今年のアカデミー賞では辻一弘氏が日本人として見事メークアップ&ヘアスタイリング賞を獲得しました。一方、TV(ABC)の視聴者数は昨年と比べて19%ダウンしました。1月に(CBS)で放送されたグラミー賞の視聴者数も昨年に比べて24%も落ち込んで1980万人だったそうです。もっとも視聴者の多いスーパーボール(NBC)でも2009年以来もっとも少ない視聴者数でした。ひとつの要因はネットを介してストリーミング配信する生中継のテレビが以前よりもはるかに安定して見られるものになったからだと思います。

米国では若者を中心に従来のケーブルTVからネットTVに移行しつつあります。人気番組をすべて見れるチャンネル数と必要な時に必ずつながるという安心感を除くとネットTVには以下の利点があります。まず、基本ポータブルであること。次に、レコメンデーションがあること。第3にメニューやナビが使いやすいことです。3番目の使いやすさで言うとたとえば、ネットテレビのサービスは一般のTV放送よりもインターフェイスがデザイン的にモダンです。中でもYouTube TVはライブ配信と、膨大な録画番組のライブラリーがあるので、今放送されているTV番組を見て、それから関連する過去の番組を見るなど、好きなように楽しめるよう設計されています。

米国と日本ではTV放送の業界構造が違うのでネットTVの意味が人によって異なるかもしれません。また、米国ネットTVの大手5社と言われるYouTubeTV、Hulu、Vue、DirecTV Now、Sling TVよりもネットフリックス、アマゾンビデオの影響のほうが大きいような気がします、いずれにせよ現状の弱点が小さくなって、通常のTV放送よりも優れたサービスが提供されるようになればネットを介して視聴するTVへの移行がより進むでしょう。これからのTV視聴を考えるうえでは生中継とオンデマンドと録画番組をどのようにブレンドしていくかの発想が大切な気がします。

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隠れた秘訣

昔から「百聞は一見に如かず」という言葉があります。消費者の注意関心持続時間が金魚以下になっているとさえ言われている中で、ブランドゆかりの地や工場、もしくは都会に出張型体験スポットを用意してブランドのストーリー、製造工程、価値を体験してもらい、記憶にとどめてもらおうとする作戦はもはや当たり前となりました。どのようなエモーショナルな体験・経験をつくれば、人々は忘れないのでしょうか。

まずひとつは消費者がその体験をする前と後、つまりビフォア、アフターでどう変わるかをきちんと考え具体的な目標をたてることです。たとえば、フォードの「マニュファクチャリング・イノベーション・シアター」の訪問客は、気軽な観光客でフォードに対しての期待は低いのですが、顧客視点のイノベーション、製造技術への熱意を目のあたりにして、熱烈なフォードファンに変容します。ここでは持ち帰ってもらうテーマを最終的にひとつにしたほうがベターです。

2番目はブランドのストーリーが明確に理解できるようにすること、消費者に何を体験させ、印象づけたいのか。ストーリーを作るうえでの大敵は、ブランド側の押し付けが退屈なものにしてしまうことです。体験型コンテンツが増えた現在、広告と同じく、想定内の体験や経験では心に響きません。そしてもう一つは体験を忘れない、記憶に残る仕掛けづくりです。パーソナルな体験や体験者同士の結びつき、記念撮影や思い出に残るオリジナルグッズはもちろん、時間を越えたブランドと体験者の結びつきを作る工夫などです。

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でも何といっても誰といつ行ったのかを良き思い出として蘇らせることこそ隠れた秘訣のような気がしますね。写真は2016年夏休みに訪問したロンドンから2時間バーミンガム郊外にあるキャドバリーワールドです。こちらは映画「チャーリーとチョコレート工場」のモデルになったともいわれています。

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