Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

大きく変わるデジタル世界

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2019年がスタートしました。世の中では忙しい一年になると言われていますが、荒れ模様ながらも光明が輝く年にしたいと思います。さて、今年がどんな一年になるか、アナリストや未来思想家などがホットなトレンドを発表しています。今回はその辺りを踏まえてブランドがとるべき行動について述べさせていただきます。

①もうひとつの価値交換

消費者は今までベネフィットの対価としてブランドにお金を支払っていました。ここにきてもうひとつの価値交換が生まれています。それが消費者自身のデータとそれに見合う消費者にとってのバリューです。今後、消費者はデータを無造作で出すことにより慎重になることでしょう。なぜならば、アプリやキャッシュレスなどから生成されるデータの影響を身近かに感じ始めたこと、一方でデータの扱い方、個人情報に対するずさんなアプローチに対して厳しい見方をするようになったからです。ブランドはこうした新たな認識に立たねばなりません。

ソーシャルメディアに潮目

SNSのプライバシー、依存によるダメージ、不正利用、社会混乱のニュースが後を絶ちません。米国ではソーシャルメディアと縁を切る判断をする消費者が増えています。最近ある業界誌が行ったジェネレーションZに対する調査では18歳以上のフェイスブックユーザーの42%が2018年に数週間以上のネット断ちをしたことが明らかになったと報じています。全体としては今年も広告支援型のソーシャルプラットフォームはまだ伸びると思いますが、ブランドは消費者と同じくそこに無駄な労力と時間をかけすぎないよう注意が必要です。

③モノからコトだけでない

買い物客がほんとうに何を欲しがっているか、買い物客のバリューについてWalgreens社CMOのホリック氏は「重要なのはモノではなく、経済的に責任感を持った商品であるかどうか、ストレスの少ない生活をもたらすかどうか、自分・家族・コミュニティなど自分の世界にとって成長や幸せにつながるかどうか」と述べています。消費者のこの変化の根本には「自分の時間」のバリューを大きくしたいというニーズがあるような気がします。ブランドはただ体験を作るだけでなく、「幸せの体験」をデザインできることがより重要となるでしょう。

2019年は昨年以上にデジタルの中身が大きく変化していくのではないかと感じています。変わらないのはテクノロジー人間性を見据えたアイデアからイノベーションを生み出せるブランドが成長を遂げていくことだと思います。

さようなら平成

今年も残すところ数日となりました。忘年会のピークを越えてクリスマスが終わると一気に師走のムードに突入します。2018年は平成30年という年月と憲政史上初となる退位という日本の歴史にかつてない出来事であり、平成最後の年末年始は何か特別な雰囲気に包まれている気がします。

30年はちょうど一世代にたとえることができます。今の天皇陛下は55歳で即位され85歳で退位なされますが、私の両親の世代にとっての思いは同世代ということでさらに感慨深いに違いありません。私事ですが、30年前30歳というバリバリの時期にあったせいもあって平成の30年間はエキサイティングだったと今振り返ると思います。まだ、携帯電話はおろかパソコンもなく、会社では不細工なワープロしかありませんでした。世の中はバブル景気に酔いしれていて、不動産やゴルフ場の会員権が高騰して、高いローンを組んでまでも家やマンションを買わないと一生家を持てないというムードでした。深夜残業は当たり前で夜中までタクシーを拾えない毎日だったと記憶しています。5年後、10年後は何となく予想したり、まだイメージを描けるでしょうが、30年となるとほとんどの人が予想外、あるいは思いもしなかった出来事を経験しているはずです。実際、バブルは崩壊し、阪神淡路の大震災、地下鉄サリン事件東日本大震災、海外では9:11の同時多発テロなど、一方、日本のノーベル賞受賞者数、コンビニ100円おにきりの美味しさ、スマホで何でもできること、などどれも私にとっては想像できない出来事でした。

さて、最後に先日の天皇陛下の会見で「平成が戦争のなかったことで安堵しています」と述べられたことにはドキッとしました。ご存知の方も多いインディアンの有名なセブンスジェネレーション(7代先のことまで考えて今の生活を行うべき)の掟というのがあります。血だけに頼らず子孫に伝えるにはこうした哲学が必要です。しかし残念ながらこうした掟があっても外的な環境変化(戦争)によってインディアンは駆逐されてしまいました。私も含めてまもなく戦争を知らない平和が当たり前としか思っていない世代だけになっていきます。おそらく30年後にはゼロになるでしょう。いつの間にか手遅れになったり、そのとき誰かが何とかしてくれるだろうというのはとても危険な考えです。

平成の30年間を振り返ってこれからの30年間を考えることは(年号を持っている)日本人にとって他の国々の人にない視点を持てるメリットとも言えます。

 

 

 

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人が買い物に求めること

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「現代の買い物客は何を求めているのでしょうか?」この質問に答えるにあたってウォールマートの最近の動きを見てみましょう。アマゾンが台頭する中、ウォールマートは米国内4000店舗のうち1000店舗以上で食品などの注文をドライブスルーで受け取れるサービスを導入、数百店舗には自動キオスクを設置しています。先週訪問したウッドブリッジにあるウォールマートは2年前まで店の一番奥にあったオンラインで注文したものを受け取るPICKUPコーナーが店を入ったレジ近くに移動していました。

ウォールマート流に言えば「お金の節約とよりよい生活」、食品スーパーで言うならば実店舗における「清潔・迅速・フレンドリー」+「価格・品質」だけでなく、今までに加えて「新たな利便性」を誰もが求めるようになったのです。小売の未来に影響するさらなるテーマとしては「情報・商品・サービスのオンデマンドでの入手」、「商品やサービスに面倒でなく快適にアクセスできる可能性向上」が取り上げられています。Walmart.comでは買い物体験の改善に向けてHave it  Find it  Display it  Price it  Deliver it といった5つの指標(customer value index)を設けています。

こうした動きの底流には実店舗とオンラインの垣根を越えて消費者の習慣が変化し続けている状況があります。テクノロジーの進化が後押ししているわけで日本でも近々急激に高まることが予想されるキャッシュレス化もそのひとつです。

さて、ここでもう一つ現代の消費者が買い物に何を求めているかについて述べたいと思います。それは「偶然の出会い」、「発見する体験」だそうです。今に始まったことでない気がしますが、利便性が高まるほど逆にクローズアップされるのかもしれません。確かに興味深い商品の新たな発見は予想外であるほど嬉しいですね。ちょっと逆説的ですが、きっと偶然だからに違いありません。では、偶然を必然に変えるにはどうすればいいのでしょうか?たとえば、9月にニューヨークにオープンしたばかりのアマゾン4スター、ここは文字通り購入した人のレビューが高い商品だけを品揃えしています。自分が知らない優れものを見つけるのは良い場所です。

一夫一婦は妄想と心得よ

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ブランドマネジャーにとって愛用者を増やすとともに自社ブランドに対する顧客のロイヤルティをあげる戦略は王道と呼べるでしょう。80:20の法則のセオリーからもブランドロイヤリティ戦略は正しいとされてきました。ライフタイムバリューを考えれば、ブランドへの忠誠心を持つユーザーを増やすことは売り上げ・利益ともにプラスに働きます。我が家では発売以来ずっと「南アルプスの天然水」を自宅で購入してきました。ミネラルウォーターだけで累計購入金額はなんと60万円以上という計算になります。

しかし、ロイヤルユーザーはマーケティング費用をどんなにかけてもそれほど多くはならないという意見があります。南オーストラリア大学のバイロン・シャープ教授が示したブランド理論は型破りで賛否両論あるものの目から鱗が落ちました。その中でもっとも印象深いのはブランドとユーザーとの関係です。ブランドマネジャーはブランドとユーザーの関係を「一夫一婦」と考えようと勘違いしますが、ユーザー側は基本「一夫多妻」としか考えていません。例えば高級腕時計市場を思い浮かべるとイメージがつかめます。パテックフィリップ、オーデマピゲをはじめずらりとブランドがあって、マニアの多くはいくつも所有しています。そう言えば、我が家の浴室には数種類のシャンプーやコンディショナーが無造作に置いてあります。歯磨き粉は3種類を朝・夜で使い分けています。イギリスにおけるコカ・コーラ購入者のおよそ半分は年に1、2本しか買わず、平均的なコカ・コーラ購入者でもせいぜい12本とのことです。ということは他の飲料ブランドを飲んでいるわけです。実際にコカ・コーラを飲む人の半数以上はダイエットコーク、ファンタ、ペプシも買っているとのことです。ブランドはヘビーユーザーを守りながらライトユーザーに少し多く飲んでもらうことに力を入れるべきと言えます。

これからの消費者は今まで以上にブランド側が決めつけたカテゴリーやブランド価値には従わないようになるでしょう。ブランドはユーザーの興味・関心がないジャンルでは購入判断を楽にしたいという潜在欲求に今以上に対応することが求められます。一方、こだわりを持つジャンルではTPOに合わせて自分なりの上質な生活シーンを送りたいとユーザーが欲する時に必要とされるブランドをより目指さなければなりません。人の世界と違ってブランドは常にユーザーに対して片思いであり、常に振り向いてもらう努力が必要なのです。

 

 

 

脱カテゴリー

 

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昨年伊勢で行われた菓子博に行った際、ご当地菓子の多さと日本人の研究熱心さに驚くとともに「昔から日本人は菓子好きなんだなあ」と改めて感じました。統計によれば、お菓子を作っている菓子やさんは全国で3万以上もあるそうです。お菓子は材料・加工・見た目、食感などのバリエーションをたくさんつけられるからだと思います。それから比べると飲料はそれほど多くありません。日本では他の国と比べて自動販売機が多いのでメーカーは違えど中身の違いがあまりないように思えます。

今、米国の飲料業界では大手ソフトドリンクメーカー、ビールメーカーが過去に例を見ないような大きなプレッシャーを受けながら、主にスタートアップが支配する新しいカテゴリーで競争に入ろうとしています。ホールフーズをはじめとした食品スーパーでは地元製造のオーガニックな飲料をはじめ、新たな派生商品にあふれています。旅行者のレベルではもはや何を選んで良いかわからない状況です。ペプシコの新CEOのラグアルタ氏は「消費者は味と栄養と便利さがそろう三角地帯へ移行しつつある」と述べています。コカ・コーラが買収したココナツウォーターZicoからはこの春コールドプレスジュース、ジンジャー、ターメリックなどを混ぜたココ・リクシルズという商品が発売されました。

従来の飲料カテゴリーに当てはまらない商品の出現、こうした流れは他の業界でもさらに広がっていく気がします。ローカルな市場とグローバルな市場がネット上で一緒になったこと、世界的な金余りによって資本が豊富になったこと、アイデアが今よりも迅速で安価に実現するようになったこと、デザインとテクノロジーが進化したこと、によって小さなブランドでも顧客の問題解決を行う独自性があれば成功する可能性が増しています。

データとプライバシーの新潮流

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2年前の夏、米国広告業界の大きな話題は初めてTVの広告費がデジタルに抜かれる広告革命でした。昨年はデジタルの巨人たち、GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)のデジタルマーケティング業界での寡占化について、そして今年はデジタル広告の信頼性、正確性、効果測定への猜疑心が消えない中でEUの一般データ保護法が成立し、広告と個人情報保護の両立がクローズアップされています。

データとプライバシーはもはや一企業と消費者にとどまらず、国や地域、社会全体の問題と言えます。ルールと方針が変わったことで、今後ブランドはできるだけ直接的に消費者からデータを集める方法を模索するようになります。ファーストパーティデータの利用と重要性が高まることは間違いないでしょう。データの取得の巧劣が優れたマーケティングができるかどうかに直結する可能性があります。

実はインターネット登場以前からロイヤルティプログラムによって顧客情報を集めるやり方は存在していましたが、スマホとアプリの普及によって飛躍的に進化しました。航空会社、金融、外食など多くの業種でポイント獲得の引き換えに顧客情報を収集し、マーケティングに活用することはどこでも当たり前となっています。製造業においても顧客をコミュニティ化して、例えばナイキやレゴなどは新商品をファンのアイデアをもとにデザインし、それを限定販売したり、一番のファンに優先販売するやり方で成功しています。ここでも企業は顧客情報を利用してさらにPDCAを回しています。

一方で消費者は自分のデータを保護したいというニーズをより強く持つようになりました。オンラインのサービスに個人情報を提供しないためにサブアドレスや捨てアドレスを作っている割合が30%近いという調査数字もあります。プライバシーやセキュリティの面でビジネスを信頼するかどうかの業界別スコアで言えば、広告・マーケティングは最低レベルです。

ブランドは顧客のデータとプライバシーを再認識するとともに、顧客に不安やストレスを与えないこと。データの提供や同意によって得られるメリットについてよりわかりやすく説明して理解を得ること。この2つを同時に行わねばならない時代に入ったと思います。

 

都市=東京を想う

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何年か前、なんとも懐かしい写真集に出会いました。それは「オリンピックのころの東京」。(岩波フォト絵本) 1964年のオリンピックが小学1年生だった自分自身の記憶にはほとんどない写真ばかりです。それでも都電やオート三輪が走り、木造2階建ての家々が都心の大通りに面してたくさん建っていた頃、街の匂いやほこり、看板やお店の思い出が蘇ってきます。当時は世界の大都市と比べるには至らなかったと思います。山手線にウグイス色の車両が登場するかしないかの頃、東京はオリンピックによって大きく変貌しました。

あれから54年が経ち。2年後に2回目のオリンピックが東京で開かれます。今度はどんな風に東京は変わるのでしょうか。都市をブランドとしてとらえるならば、行きたい、住みたい、働きたい、と思えることはブランド力につながります。知事はより安心で、安全な都市「セーフ シティ」、誰もがいきいきと活躍できる都市「ダイバーシティ」、そして、世界に開かれた、環境・金融先進都市「スマート シティ」、この3つのシティの実現を目指すと宣言しています。ロンドンは前回のオリンピックを梃にして世界都市力ランキングを6年連続1位にしました。東京は現在3位、「文化・交流」、「交通アクセス」、「経済」、「研究開発」、「居住」、「環境」の6つの指標でトップはひとつもありませんが、大きな弱点もないようです。東京生まれの東京育ちで田舎を持たない自分にとって東京が世界一になることはもちろん嬉しいのですが、どうも何かが抜けているような気がします。

今、地球上で3つの大きな力(テクノロジー・グローバリゼーション・気候変動)が人々に大きな影響を与えています。不安や負の部分をいかに希望とプラスに変えられるか、これからの都市は「レジリエンス 強靭さ」、自発的治癒力を高めていく必要があると感じています。例えば、リノベーションがしやすいこと、エネルギーや交通の最適化がはかれること、住んでいる人々のネットワークがあること、そして愛される東京を想う強い心です。

それにしても2020年の夏、最高気温が40℃とならないことを祈るばかりです。