Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

チャレンジャーブランドを考察する

f:id:bbmedia:20191123172711j:plain


ヘルスケア、ホームケア、化粧品、飲料、衣料、などの分野にD2Cを中心とした新しいブランドが続々登場しています。ちょっとした米国でのバズワードなのですが「起業家精神が旺盛、機敏でスマート、市場の白紙の領域を見つけてエッジが立っている、データの利用も上手、干渉型でなく物語型、、」と定義されるブランドをチャレンジャーブランドと呼んでいます。これから日本でも名前は違えど増えていくのではないかと感じています。

今回はチャレンジャーブランドを通じて今後のマーケティングを少し考えてみたいと思います。まず、チャレンジャーブランドが誕生したきっかけは何か、今までとどこが違うのか。ひとつには商品やサービスのニーズを実現することがかつてより容易になったことがあげられます。全体の技術水準が上がってOEMやデザイン思考によって平凡に見える物事に対して優れたアイデアやコンセプトをもって、情熱のポイントを見つけ出し、ナラティブ(物語)があれば魅力的なモノを作れるようになりました。また、Eコマースの普及によって販売員やチャネルを持たなくてもダイレクトに顧客にアプローチできるようになりました。サブクリ型やシェアリング型のビジネスモデルの普及も昔との違いです。自らのニーズをもってカテゴリーを打ち破ることが得意なのでコアなファンを得やすいことも理由のひとつです。

チャレンジャーブランドの典型的なマーケティング手法はインスタグラム、ポッドキャスト、ペイドインフルエンサーなどを利用して口コミを行うことです。ストーリーを拡大し、定着し、愛着を獲得していきます。何といってもチャレンジャーブランドが従来のブランドと比べて有利な点は起業家的思考を持っていることです。自分自身がほしいと思うモノやサービスなのでブランドのストーリーテリングが明快です。たとえば、フルーツ入りフレーバーウォーターhintの創業者のゴールディン氏は起業エピソードの中で「以前はダイエットコークを愛飲していた。だが、その習慣を捨てようと思い、ミネラルウォーターにフルーツのスライスを入れて飲むようにした。すると肌の調子がよくなり体重も減った。飲料カテゴリーを見て自分自身が健康でいるための商品がなかった」と語っています。そしてチャレンジャーブランドの多くは賛同してくれたコアな顧客のファーストパーティデータを理解し、活用することで機敏に改良を行います。

では一方でチャレンジャーブランドにとっての試練とは何でしょうか。第一に当たり前ですが顧客獲得、継続的に新規顧客を獲得していかねばならないことです。ストーリーの規模を拡大していかねばならない時、長期的な顧客価値の追求と短期的な顧客獲得のバランスをとることは簡単ではありません。また、同様のライバルが出現して市場が飽和してしまう恐れもあります。さらに、天然や健康志向のブランドなど消費者からかなり厳しい目を向けられていて、たとえば女優のジェシカ・アルバ氏が立ち上げたオネストカンパニーはブランドとして使わないと公約していた一般的な化学成分が洗剤に入っていたことを新聞で報道されブランド拡大中に大きな打撃を強いられました。多くのチャレンジャーブランドが途中で勢いを失ったり、市場から消えていく理由です。

従来の大ブランドは既存メディアでのスケールモデルに拘ってきました。これはマス広告とリテールへの配荷力が絶大な力をもっていたからです。これからは従来の大ブランドがチャレンジャー型の戦略を今以上に取り入れていくと思います。一方で成長したチャレンジャーブランドは他のチャレンジャーブランドができない頻度とリーチだけでなく、規模をとる戦略を併用するでしょう。つまり、両者のマーケティングがお互い近づいていくのではないかと思います。