Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

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千円札からのメッセージ

日頃一番身近でお世話になっているお札といえば、千円札。ミスター千円札といえばかつては夏目漱石漱石ファンの方から「私の個人主義」という本を紹介され、先日読んでみました。今まで文筆家としてしか知りませんでしたが、これは漱石の晩年に行ったいくつかの講演録を集めて編集したもので彼の人生観、職業観、社会観を知ることができるユニークな本です。クリエーティブ業という言葉がなかった明治時代、「作家」という職業は今とは比べられないくらい際立った仕事だったに違いありません。教師を捨て文筆業になる決心は何処から生まれたのか?イギリス留学を終え、文学とは何か、東西での考え方の違いは何か、から漱石が到達した考えは「自己本位」、これは自分中心のわがままという意味ではなく、人の考えと自分の考えを照らし合わせ、自己の立脚点にたって生涯の事業を見出すことこそが生きがいのある生涯を送る条件と悟ったのです。

また、「道楽と職業」の区別もこう言っています。道楽は「自分のため」、職業は「人のため」、に行うもの。つまり、誰もやりたがらない仕事を一生懸命やれば、立派な職業になりますが、自分の好きなこと(作家、芸術家、ミュージシャン、、、)の場合には他人が認めてくれない限り職業にはならないと述べています。当たり前のことですが、まだ職業の種類が少なかった明治時代、今に通じる本質的な考え方を述べています。さらに漱石は「他人の個性の尊重」、「権力を所有するものの義務」、「金力を使用するものの責任」について具体的に述べるとともに倫理的に修養を積んだものでなければ、個性の発展、権力・金力の使用も価値なしと喝破しています。語り口も人間味があふれ、私も改めて漱石ファンになりました。