Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

アルファ世代への準備

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新型コロナの変異株の呼び名はたった2年であっという間にアルファからデルタ、そして一気に15番目のオミクロンにまで進んでいます。いったいどこまで変異を続けていくのでしょうか。

さて、マーケティングの世界ではベビーブーマー(1946~1964)、ジェネレーションX(1965~1980)、ミレニアルズ(1981~1996)、ジェネレーションZ(1997~2009)と戦後から受け継げられてきた米国人の世代の呼称がアルファベットの最後まで辿り着いてしまいました。さあ次はどうするんだろうと以前から興味を持って見ていたら、こちらもギリシャ文字のアルファα、これから生まれてくる赤ちゃんも含めてジェネレーションα(2010~)と呼ばれています。今後はきっとα、β、γと続いていきそうですね。

アルファ世代はミレニアルズをちょうど親にもつ世代でもあります。Z世代がインターネットの勃興期に生まれてきたようにジェネレーションαはiphone(つまりスマホ)の誕生の時期とスタートが一致します。この世代の特徴としてまず言えるのは何といってもテクノロジーを操る能力を生まれた途端から身についていることです。Z世代にもかなわないデジタル前時代の世代にとっては思考回路が違うと言っていいでしょう。また、Z世代に続いてサステナブルや社会的な課題を重んじ、さらに積極的な行動をとっていくと予想されます。さらに特徴として今回のパンデミックの体験を子供目線で体験していることです。スクリーンやゲームやSNSの使い過ぎの影響からメンタルヘルスウェルネスについても知識が豊富だと言われます。

賢明なブランドはこうした変化に気づいています。様々なブランドが物理的体験とバーチャル体験の両方を取り入れた家族向けサービスを展開しています。アパレルブランドのノースフェイスは登山家、写真家、映画監督、アスリートなどを集めてオンラインとオフラインを合わせた仮想環境でキャンプ体験ができるプログラムを開発しました。多くの子供たちが自宅で過ごしていることから画材ブランドのクレヨラはcreate it yourselfと称して自宅で創作するにあたってヒントとなる動画を配信しています。また、すでにいくつかのブランドはアルファ時代を意識したパーパスを実行に移しています。大手玩具メーカーのマテル社は環境に優しい包装だけでなく、「マテル・プレイバック」という遊び終わった玩具を回収して新しい玩具に生まれ変わらせるプログラムを開始しました。映画トーイストーリーを見たとき玩具に切ない気持ちを抱いたことを思い出させてくれますね。

アルファ世代という名前は「全く新しい世代が、テクノロジーが統合された新しい世界で育っていく」ことから付けられたそうです。まだアルファ世代の先頭はこれから中学校に入学するタイミングですが、おそらく社会に思った以上に早く影響を及ぼしていくのではないかと感じています。

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シクラメンを眺めながら

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花屋さんの店先にシクラメンが並び始めるとカレンダーの最後のページをめくる頃となります。コロナの新規感染者が劇的に減ったせいか、シクラメンの華やかさも殊の外増した気がします。

かつてドラッカーは企業の目的とは「顧客創造」であり、社会の変化とともにイノベーションを起こし、マーケティングを駆使して、新たな顧客を創造していくことである、だからこそ企業にはマーケティングイノベーションという2つの基本機能が必要と述べていました。しかし、いつの間にかマーケティング機能は細分化されて、ブランドや生活者に対する真の視点を見失って従来型のマーケティングは輝きを失いました。「マーケティングは今存亡の危機にある」とはマスターカードCMOラジャ・ラジャマナー氏の今年2月に出版された新著Quantum Marketingの中にあった言葉です。グローバルの多くの企業でCMOの肩書がなくなったり、マーケティングがビジネスを成長させるかについて従来よりも懐疑的になったり、マーケティングが時代遅れになっているとか。確かにマーケティングが本来の機能からずれて行われているような気がします。

たとえば、小売業などが長年やってきたロイヤルティプログラム(会員制度)を見てみましょう。デパートや専門店のカードやアプリなど、どれをとっても値引きだったりポイント付与だったり実質は単なる割引制度です。その結果、同じ市場にいる競合ブランドがそろって行うことでロイヤルティプログラムだらけになっています。これではもはやマーケティングとは呼べません。差別性がなく茹で蛙のような状況です。そうした中でパンデミックが起きました。ご存じのようにEコマースが一気に広がり、店頭体験で感じるブランド価値が失われてしまいました。

米国小売業界では顧客履歴の重要性の高まりなど上記以外の要因が連鎖してロイヤルティプログラムのアップグレードが進んでいます。ドラッグストアチェーンのウォルグリーンは昨年末会員プログラムを刷新しました。新しいアプリによって一律のサービスから顧客・コミュニティ・患者のニーズに合わせたパーソナルなサービスを提供できるようになりました。歴史あるデパートのブルーミングデールズでは小売りのクレジットカードを作りたがらない顧客に対して決済方法を問わないシステムに変更し、無料の優先配達やバーチャルショッピングイベントへの無料招待、インスタグラム投稿を通じた商品先行予約など買い物客との強い関係性構築に力を入れています。

マーケティングの新しいモデルではWEB・店頭・アプリなどあらゆる顧客とブランドの接点において一貫性のある内容を提供していかねばなりません。データとテクノロジーを活用して、個々のニーズに合わせたユニークな体験や特典を作れるようになった今、マーケティングを顧客中心に再統合していく流れは活発化すると思われます。

そういえば長年シクラメンを購入していた写真のお店では一昨年まで誕生月にポイントが2倍貰えていたのですが、代替プログラムもなくポイントカードを廃止してしまいました。寂しいなあ~。

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嫌悪から信念へ

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先週あたりから夏の空気から秋を通り越して一気に冷たい空気に入れ替わりました。夕方5時にはすっかり辺りが暗くなると少し寂しさを感じます。ようやく飲食店への時短要請が解禁となり、このままコロナが収まって夜の街の活気が徐々に戻ってくることを願うばかりです。

さて今回は、ちょうど30日が総選挙のタイミングということもあってユニリーバ社のチーフブランドオフィサー、アリーネ・サントス氏がカンヌの講演で発表した3つの目標をご紹介したいと思います。

1.私たちは世界の冷酷な現実に近づかなくてはなりません。リアルな人々のリアルな問題に近づくのです。この目標を「リアルをつかむ(Get real)」と呼びます。

2.私たちは世界に善をもたらす力にならなくてはいけません。ブランドで確かな変化を生み出していくのです。これを「善を行なう(Do good)」と名付けます。

3.私たちはブランドを何より最初に思い浮かべられる存在にする必要があります。クリエイティビティと、入手しやすさで、ベストにならなければいけません。これを「逃すことのできない存在になる(Be unmissable)」と呼びます。

まるでどこかの政党の選挙演説のようですが実は違います。私たち=マーケティングと置き換えてブランドの成長にとってマーケターが今やるべき事を指しています。

ブランドや企業がここまで踏み込んだ考え方を持つようになったのはなぜでしょう。

Edelman 社が「ブランド」と「信頼」に関して世界14カ国で行った今年の調査結果によれば、4つの顕著な発見があったそうです。まず最初に人々は社会を良くしたいという思いを自ら行動するかわりに自分たちの購買力でブランドに行動を促すようになったこと。もはや「買うか買わないか」という程度ではありません。「積極的にボイコットをします、ブランドに正しい行動を要求します」となっています。ふたつめは評判とブランドマーケティングの関係が根本的に変化していること。なんと回答者の60%が「立場を明らかにしていない企業、意見を表明していない企業、邪悪な企業のブランドは買わない」と答えました。次は人々が最も重視していることの中に「この企業は、世界中で、自社の労働者を適切に扱っているか」という要素が入っていました。4番目はブランドの持つカルチャーが世相を変えていくことが期待されていること。カルチャーを変えることができたら「信頼」は38%伸びるそうです。ブランドが活動家となり、率先して行動し、リスクをとること。それが現代のブランドに求められています。

あいまいさを好み、波風を立てることに消極的な日本ではどうでしょうか。自分自身を振り返ると邪悪なブランドに対する嫌悪感は以前より増した気がします。しかし、多くの人々は欧州に比べてまだ動きは鈍いと感じます。企業やブランドはあっという間にSDGの大合唱を唱えるようになりました。ユーザー側・企業側の両方とも表面的な評判を気にしすぎる一方で「信念が購買を動かす(believe-driven buying)」という発想は弱い気がします。

今、マーケティングこそ過去に例がないほど社会に良い変化を起こすことができる有利な立場にいると見方をチェンジして「ブランドの持つカルチャーが社会を変えていく」という信念を持てば、もっと活発な動きにつながるのではないでしょうか。

 

 

 

「気に掛けています」が出発点

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カタカナ英語を上手く日本語に直せないという悩みは今に始まったことではありませんが、経営の基本用語となった「エンゲージメント」もその一つかと思います。企業においては主に二つの視点、一つはカスタマー(顧客)エンゲージメント、もうひとつはエンプロイー(従業員)エンゲージメント、いずれも極めて重要ですが意味はやや違います。

エンゲージメントという言葉を米国で初めて聞いたのはもう20年近く前のこと、当初はデジタルマーケティングを中心に顧客のブランドへのエンゲージを高めるにはどうすれば良いか「顧客を巻き込む、行動を促す」という文脈で使われていました。それより前にブランドマネジメントで重要視されていたブランドロイヤリティは顧客のブランドに対する忠誠心を表す感情的な指標だったことに対してブランドエンゲージメントは顧客のブランドへの関係性の深さを表す行動的な指標となりました。マーケティング用語集によれば、カスタマーエンゲージメントは「企業やブランドに対する消費者の関係性の深さのことでそれまでとの違いは購買だけでなく、あらゆる消費者の積極的な行動を指す」とあります。

近年、カスタマーエンゲージメントが注目されるようになったのには理由があります。まず、ひとつはデジタル社会になってから顧客が企業やブランドといつでもどこでも繋がるだけでなく、顧客自身もSNSを自在に使っての受発信ができるようになりました。ふたつめは顧客がブランドや企業に社会問題の解決を求めるようになっただけでなく、賛同する企業への応援もするようになったことです。これはパンデミックが起きてからさらに機運が高まりました。そして3番目は顧客の行動履歴だけでなく、顧客からの意見をより聞ききながら商品やサービスの改善をしていくことが容易になったことです。つまり、ブランドや企業活動に対して顧客の行動がパワーを増したと感じます。

先日、オンラインで健康食品を購入したところ写真のような段ボールの箱に入って送られてきました。段ボールの内側に印刷された日本ぐるり四季巡りを思わず見て感心してしまいました。商品に添えられた社長からのメッセージの末尾には「~。これまで以上に、どうかお気軽に、どうか何なりと、お声を頂戴できれば幸いです」と書かれていました。なるほど、ほんの小さなことでも幸せと思える時間を積み重ねていく、お客様に幸せな時間や体験をお届けするために、お客様のお一人おひとりの幸せを知ることに努め、その気持ちに寄り添う、という気持ちを段ボールだけで感じることができました。

エンゲージメントには元々「契約」とか「約束」といった意味を持っています。お互いに関心をもって目に見えない約束を守ることがエンゲージメントの土台となります。まもなく、久方ぶりに任期満了による衆議院議員総選挙が行われます。総務省のまとめによれば、1960年代から90年代まで投票率は65%を超えていたそうです。それが17年では54%、19年では49%となりました。これはエンゲージメントの低下に他なりません。投票に行っても変わらないというあきらめ感が蔓延しているのでしょうか。

活力を取り戻すには企業はもちろん、国・政治・社会すべてにエンゲージメントがもっと必要です。

 

 

 

 

 

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体験マーケティングの進化

 

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長引くコロナとの闘いに世界中の人々が疲れ気味になってきました。ワクチン接種が進めば元の生活に戻れると接種が進んでいた国々ではマスク外しやオフィス出社を開始を予定していましたが、デルタ株による感染再爆発によって延期を余儀なくされています。日本ではワクチン接種が進んでも秋冬の社会経済活動が正常にできるかどうか不透明さが増しています。医療崩壊を何としても食い止めなければならない今、コロナ慣れ、バーチャル疲れは人々のリアル行動を掻き立てる一面を持っています。こちらはまさに要注意です。

パンデミックが起こる前からVR、ARやプロジェクションマッピングを活用したイベントや施設でリアルに加えてバーチャルな工夫でもってよりユーザーとの結びつきや高揚感を生み出す動きはすでにありました。しかし、この1年半の間はリアルなしのバーチャル体験にシフトせざるを得ませんでした。「ブランドも消費者も、昨年は新しい現実に適応してきたが、1日1日とバーチャル疲れが蔓延しているのを感じる。リアルな結びつきへの欲求が高まっている」とCAAブランドコンサルティングのミシェル・ロガーノ氏が述べているように、画面を通じた映像や音声だけのイベントに人々は飽き始めていると感じます。

こうした状況はブランドにとって以前よりも創造的な方法で消費者の関心をつかもうとする動きにつながっています。たとえば、バカルディはナイトクラブでティスティングとエンタティメントの代わりに、バーチャルバーテンダーを登場させた試みで見込み客を増やしました。技術を駆使して、実際にイベントに集まっている雰囲気を作り出しました。ニュージーランドワインのキム・クローフォードは無観客で開催が決まった全米オープンテニスで例年の試合会場でのイベントや商品提供の代わりに、フィットネス系インフルエンサーが登場するライブソーシャルイベント「試合の合間にフィットネスしよう」を立ち上げて視聴者をワークアウトに参加させました。バーチャルコンテンツと事前撮影したコンテンツの組み合わせ、小人数の対面イベントとバーチャルの合体などブランドやコンテンツ制作会社は対面イベントをバーチャルで再現するだけでとどまらない手法を行うようになりました。「バーチャル疲れ」を超えるような新たな感情的な絆を作れるアイデアや方法が必要となっています。

パンデミック後、多くの人の働き方が在宅と出社のハイブリッド型になっていくのと同じように体験マーケティングもライブとバーチャルの両方をブレンドする時代となることでしょう。

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東京2020開会式を見て

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開催の是非をめぐってこれほど世論が割れ、一方、パンデミックが収まらない中、これほど世界が注目するオリンピックは史上初めてではないでしょうか。2020東京オリンピックパラリンピックが感染拡大を抑えつつ、最後まで無事にしっかり行われることを切に願うばかりです。

さて、みなさんは昨日(7月23日)の開会式(オープニングセレモニー)をご覧にななられたでしょうか。極めて個人的な感想ですが、テレビ(おそらく世界中の人々と同じ)で見る限り、間際までのトラブル続きに屈せずよくここまでやったと感じました。オープニングセレモニーとして日本のプレゼンスと人類共通のテーマを上手くマッチングできた演出でした。競技場内の聖火ランナーの姿から過去・現在・未来の日本の在り様をしみじみ汲み取ることができました。また、持続可能な社会を目指すことを意識したドローンで描いた青い地球と大会エンブレム、水素を燃料とした聖火台などは共通メッセージになっていたかと思います。当初からのコンセプトである「多様性と調和」、「未来への継承」、「全員が自己ベスト」は苦難の末の開催によって内なる秘めた力が増したように思えました。であれば改めてエールを送りたいと思います。

今回アスリートが目指す「より速く」、「より高く」、「より強く」の言葉に新たに「一緒に」(Together)が加わりました。それは何といっても前回のリオデジャネイロから5年が経過して世界が変わったことを表しています。コロナによるパンデミックは強者と弱者の差をより大きくしました。現状ではワクチンの有無がそのまま感染拡大による医療崩壊や経済ダメージに直結してしまっています。また、貧困や差別だけでない人権問題、さらに気候変動問題などが深刻さを増して一気に吹き出しています。これらの諸問題は多くの国々や人々が一緒に取り組まなければ解決しないことです。「一緒に」は言うは容易いですが行うは難しです。その中で難民選手団の参加は一石を投じていますね。しかし、物理的な交流が大きく制限されている今大会では残念ながら難しいと言わざるを得ません。

もう一つここで忘れてはならないことがあります。それはポジティブなレガシーをいかに残すかです。オリンピックをブランドとして考えるならば、オリンピズムによって人間の尊厳を元にした平和な社会の推進をスポーツを通じて達成することが普遍的な使命と言えます。今、世の中ではたとえ小さなブランドでさえもより社会性を意識した形に変貌しつつあります。であればオリンピックは東京大会を契機に原点に立ち戻り、パーパスを問い直し、軌道修正していくことが必須かと思われます。おそらく、従来の行き過ぎた商業主義(米国のTVの放映スケジュール優先など)から脱皮することも考えてみたらどうでしょう。

 

 

リスクコミュニケーションの大切さ

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「オリンピックは無観客が望ましい。やるのであれば感染が拡大し、医療がひっ迫しない方法でやってほしい。そのために専門家として、どんなリスクがあるのか、それに対してどんな工夫が考えられるのかを提言に書き込んだ。」と先週政府の分科会の尾身茂会長が述べました。その後、実際にどうなっているか、社会・経済活動から発生するリスクについてどのように合意を形成すればよいのでしょうか。

リスクに関して利害関係者とコミュニケーションを図るプロセスは「リスクコミュニケーション」と呼ばれています。このリスクコミュニケーションの歴史は米国の社会運動や消費者運動とともに進化してきたと言われます。リスクコミュニケーションの成否は利害関係者間の理解と信頼のレベルがどれだけ形成されたかで決まります。つまり、相互の意見交換を通じてみんなが納得する合意形成を得られたかどうかよりも、情報伝達-意見交換-相互理解-責任の共有を通じた信頼の構築を目指して行われます。昨年、パンデミックが広がったころ、米国ではトランプ大統領とCDC(疾病対策センター)の間で大きく意見が乖離し、それが州によって対応の違いを生みだし、結果として感染者を増やす大きな一因となりました。では昨年の日本はどうだったか、予防-検査-治療における問題点はしっかり解決されたとは言えないものの、利害関係者の相互努力によって政府-自治体-企業-国民の間での信頼のレベルはなんとかキープできたと感じています。しかし、冒頭にあるオリンピック開催によるリスクについて信頼のレベルは低いと言わざるを得ません。

さて、これから必要なリスクコミュニケーションと言えばワクチン接種についてです。バイデン大統領は「独立記念日の7月4日までに、成人の70%が少なくとも1回のワクチン接種を受ける」という目標を掲げています。重要なのはワクチン接種後の感染率が0.01%になっているデータ、1回目と2回目で異なるワクチンを投与した場合の効果、2度目のワクチン接種を遅らせた場合の効果に関する研究などが続々と発表されていることです。一方でワクチン未接者の感染リスクは依然として残っています。現状ではワクチンの有効性が高いうちに多くの人に「接種して変異株を生じさせないことがコンセンサスになってきました。すでに成人の50%以上がワクチン接種を打ったところまで来ましたが、20%以上の国民は接種をためらっているとも言われています。

そんな中でカリフォルニア、ニューヨークなど各州はユニークな方法でワクチン接種促進キャンペーンを積極的に行っています。そしてこの動きはブランドにも広がっています。例えば、ユナイテッド航空はワクチン接種を完了したマイレージプラス会員向けに無料フライトが当たる懸賞キャンペーンを実施、若者にも訴求するため利用クラスは問わず、6月中に抽選で30組に全世界で使える往復航空券と7700ドル(約84万円)をプレゼントするものです。バドワイザーのアンハイザーブッシュ社も目標に達したら全成人にビールを1杯ずつ提供する発表を行いました。

日本ではワクチン接種が遅れていましたが、ここにきて政府や自治体によるワクチン接種に加えて多くの企業や団体による職域接種が始まりました。しかし、ワクチン接種に関する情報伝達は不足していると感じずにはいられません。また、ブランドや企業の動きも控えめです。相手に理解や協力を求めるリスクコミュニケーション(信頼の構築)をもっと意識していかねばなりません。