ブランドにとって顧客データに関するマネジメントは新たな段階を迎えつつあります。
最初に変化をもたらしている要因を整理すると①データに対する価値の理解が企業と顧客双方に広がったこと、②プライバシーの優先化が進むとともに顧客が昔とは違う期待をブランドに抱くようになったこと、③アップルに始まったブラウザやOSの仕様変更によってユーザーの識別情報が取れなくなったこと、④GDPRのような新たなプライバシー法が成立したことなどが挙げられます。④について同意のマネジメントが必要なのはヨーロッパだけだという認識がありますが、今年米国の5つの州で新たなプライバシー法が導入される予定です。昨年8月にCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)に基づいてSephora社が120万ドルの罰金の支払いを命じられました。罰金のほかにサードパーティとの関係の説明、オプトアウトの意思表示などの修正を余儀なくされました。2024年末までに世界人口の75%が新たなプライバシー法の下に置かれるそうです。
次に顧客テータに対する同意のマネジメントを行っていくうえでポイントは何かについて述べてみます。第一は言うまでもなく同意(Consent)は顧客体験の一つだということです。プライバシーやコンプライアンスのチームだけに任せるのではなく、ブランドマーケティングのチームがコミットして全体の顧客体験の一部として顧客に決定権を与えなければなりません。第2にデバイスベースのアイデンティティ(ID)に対する同意とパーソンベースの個人情報(ID)への同意を識別することです。3番目としては同意と言っても法的な最低レベルから顧客が自ら情報を渡したいと思うレベルまで段階とともに顧客にメリットを与えていかねばなりません。
米国ではリテールメディアが大きく成長しています。2024年までにリテールメディアに投じられる広告支出は600億ドル以上、デジタル広告支出全体の20%近くにまでなるとも言われています。リテールメディアの元祖と言えばアマゾンです。膨大な購入履歴をもとにしたセグメントで動画広告のターゲティングを実現しています。もともと小売りという業態は実店舗とデジタルの両方を持っているので買い物客を特定し、会員カード、対面販売、デジタル体験を活用してアドレサブル・オーディエンスをターゲティングできる強みがあります。ウォールマート,クローガー、ターゲットなどが本格的にリテールメディアに乗り出したことで消費財ブランドの多くが広告費を増やしています。一方、リテールメディアの成長とともにプライバシーの懸念が生じています。ここでも他のブランドの宣伝やリターゲティングを行うための同意のマネジメントが必要になってくると思います。