Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

リスクコミュニケーションの大切さ

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「オリンピックは無観客が望ましい。やるのであれば感染が拡大し、医療がひっ迫しない方法でやってほしい。そのために専門家として、どんなリスクがあるのか、それに対してどんな工夫が考えられるのかを提言に書き込んだ。」と先週政府の分科会の尾身茂会長が述べました。その後、実際にどうなっているか、社会・経済活動から発生するリスクについてどのように合意を形成すればよいのでしょうか。

リスクに関して利害関係者とコミュニケーションを図るプロセスは「リスクコミュニケーション」と呼ばれています。このリスクコミュニケーションの歴史は米国の社会運動や消費者運動とともに進化してきたと言われます。リスクコミュニケーションの成否は利害関係者間の理解と信頼のレベルがどれだけ形成されたかで決まります。つまり、相互の意見交換を通じてみんなが納得する合意形成を得られたかどうかよりも、情報伝達-意見交換-相互理解-責任の共有を通じた信頼の構築を目指して行われます。昨年、パンデミックが広がったころ、米国ではトランプ大統領とCDC(疾病対策センター)の間で大きく意見が乖離し、それが州によって対応の違いを生みだし、結果として感染者を増やす大きな一因となりました。では昨年の日本はどうだったか、予防-検査-治療における問題点はしっかり解決されたとは言えないものの、利害関係者の相互努力によって政府-自治体-企業-国民の間での信頼のレベルはなんとかキープできたと感じています。しかし、冒頭にあるオリンピック開催によるリスクについて信頼のレベルは低いと言わざるを得ません。

さて、これから必要なリスクコミュニケーションと言えばワクチン接種についてです。バイデン大統領は「独立記念日の7月4日までに、成人の70%が少なくとも1回のワクチン接種を受ける」という目標を掲げています。重要なのはワクチン接種後の感染率が0.01%になっているデータ、1回目と2回目で異なるワクチンを投与した場合の効果、2度目のワクチン接種を遅らせた場合の効果に関する研究などが続々と発表されていることです。一方でワクチン未接者の感染リスクは依然として残っています。現状ではワクチンの有効性が高いうちに多くの人に「接種して変異株を生じさせないことがコンセンサスになってきました。すでに成人の50%以上がワクチン接種を打ったところまで来ましたが、20%以上の国民は接種をためらっているとも言われています。

そんな中でカリフォルニア、ニューヨークなど各州はユニークな方法でワクチン接種促進キャンペーンを積極的に行っています。そしてこの動きはブランドにも広がっています。例えば、ユナイテッド航空はワクチン接種を完了したマイレージプラス会員向けに無料フライトが当たる懸賞キャンペーンを実施、若者にも訴求するため利用クラスは問わず、6月中に抽選で30組に全世界で使える往復航空券と7700ドル(約84万円)をプレゼントするものです。バドワイザーのアンハイザーブッシュ社も目標に達したら全成人にビールを1杯ずつ提供する発表を行いました。

日本ではワクチン接種が遅れていましたが、ここにきて政府や自治体によるワクチン接種に加えて多くの企業や団体による職域接種が始まりました。しかし、ワクチン接種に関する情報伝達は不足していると感じずにはいられません。また、ブランドや企業の動きも控えめです。相手に理解や協力を求めるリスクコミュニケーション(信頼の構築)をもっと意識していかねばなりません。