先週あたりから夏の空気から秋を通り越して一気に冷たい空気に入れ替わりました。夕方5時にはすっかり辺りが暗くなると少し寂しさを感じます。ようやく飲食店への時短要請が解禁となり、このままコロナが収まって夜の街の活気が徐々に戻ってくることを願うばかりです。
さて今回は、ちょうど30日が総選挙のタイミングということもあってユニリーバ社のチーフブランドオフィサー、アリーネ・サントス氏がカンヌの講演で発表した3つの目標をご紹介したいと思います。
1.私たちは世界の冷酷な現実に近づかなくてはなりません。リアルな人々のリアルな問題に近づくのです。この目標を「リアルをつかむ(Get real)」と呼びます。
2.私たちは世界に善をもたらす力にならなくてはいけません。ブランドで確かな変化を生み出していくのです。これを「善を行なう(Do good)」と名付けます。
3.私たちはブランドを何より最初に思い浮かべられる存在にする必要があります。クリエイティビティと、入手しやすさで、ベストにならなければいけません。これを「逃すことのできない存在になる(Be unmissable)」と呼びます。
まるでどこかの政党の選挙演説のようですが実は違います。私たち=マーケティングと置き換えてブランドの成長にとってマーケターが今やるべき事を指しています。
ブランドや企業がここまで踏み込んだ考え方を持つようになったのはなぜでしょう。
Edelman 社が「ブランド」と「信頼」に関して世界14カ国で行った今年の調査結果によれば、4つの顕著な発見があったそうです。まず最初に人々は社会を良くしたいという思いを自ら行動するかわりに自分たちの購買力でブランドに行動を促すようになったこと。もはや「買うか買わないか」という程度ではありません。「積極的にボイコットをします、ブランドに正しい行動を要求します」となっています。ふたつめは評判とブランドマーケティングの関係が根本的に変化していること。なんと回答者の60%が「立場を明らかにしていない企業、意見を表明していない企業、邪悪な企業のブランドは買わない」と答えました。次は人々が最も重視していることの中に「この企業は、世界中で、自社の労働者を適切に扱っているか」という要素が入っていました。4番目はブランドの持つカルチャーが世相を変えていくことが期待されていること。カルチャーを変えることができたら「信頼」は38%伸びるそうです。ブランドが活動家となり、率先して行動し、リスクをとること。それが現代のブランドに求められています。
あいまいさを好み、波風を立てることに消極的な日本ではどうでしょうか。自分自身を振り返ると邪悪なブランドに対する嫌悪感は以前より増した気がします。しかし、多くの人々は欧州に比べてまだ動きは鈍いと感じます。企業やブランドはあっという間にSDGの大合唱を唱えるようになりました。ユーザー側・企業側の両方とも表面的な評判を気にしすぎる一方で「信念が購買を動かす(believe-driven buying)」という発想は弱い気がします。
今、マーケティングこそ過去に例がないほど社会に良い変化を起こすことができる有利な立場にいると見方をチェンジして「ブランドの持つカルチャーが社会を変えていく」という信念を持てば、もっと活発な動きにつながるのではないでしょうか。