Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

政治とブランド

f:id:bbmedia:20220325104757p:plain


「郷に入っては郷に従え」ということわざがあります。日本のブランドが海外に進出する際にその国や地域に合わせて展開する基盤となる考え方と言えます。もちろんそこには法律も含まれるわけで政治と無縁ということはあり得ません。

ベルリンの壁の崩壊から30余年、連日テレビから流れるウクライナの痛ましい映像を見て「とうとうここまで来てしまったか」というのが今の気持ちではないでしょうか。昨年の今頃は東京オリンピックが果たして開催できるかというパンデミックの行方と2月に起きたばかりのミャンマー軍によるクーデターのニュースがまだ冷めない状況であったかと思います。1年が経って夏・冬のオリンピックは何とか開催できましたが、ミャンマーは未解決のまま、さらにウクライナ危機が勃発してしまいました。すでに日本企業も含めて多くの欧米企業・ブランドがロシアでの活動停止や撤退を決めました。

実はウクライナ危機の前から世界秩序のもと平和で自由な社会を前提としたグローバルブランドにとってすでに政治との関係に悩む状況が続いています。たとえば、欧米の消費者がブランドに対して人権問題など企業ブランド自身の確固たる意見を表明することを求めていたこともあって実際にアディダス・ナイキ・プーマなどの欧米スポーツアパレルブランドは昨年中国ウイグル自治区における強制労働疑惑に懸念を表明しました。結果として中国の消費者の強烈な反発やボイコットを受けました。また、中国企業と共有で2032年までオリンピック公式ノンアルコール飲料スポンサーの契約を結んだコカ・コーラは北京冬季大会において中国でオンラインと実店舗でのキャンペーンで大会を祝い、オリンピックグローバルパートナーと書かれたコカ・コーラ缶を発売しましたが、米国内ではオリンピック仕様のコーラ缶、TVCM、アスリートを応援する屋外広告などを行わず沈黙を保ちました。アディダスの中国本土の売上は全世界の25%、コカ・コーラは中国の売上が米国、メキシコに次ぐ第3位だそうです。

様々な国において本来ブランドがとる行動はどうあるべきなのでしょうか。ひとつの考え方として政治とブランドパーパスを混同させないことが肝要であると思っています。ブランドパーパスの達成が可能な限りは多様性を肯定しつつ、一方達成できない政治状況であれば撤退ありの覚悟も必要です。長年にわたり成功しているブランドはあくまで企業のDNAや存在理由、ビジネスのもたらす成果にパーパス(事業の成功=社会への貢献)がしっかり組み込まれています、政治によってその活動がブレることは長期的に見てマイナスです。飲料メーカーであるならば、人が集まって交流する、水の枯渇を防ぐ、リサイクルを促進する、、といった活動はパーパスの延長にある活動であって永続的です。実際、社会には感染症、温暖化、環境破壊、飢餓、教育、宇宙といったさまざまな課題があってこちらはお互いに協力しあっていかねば解決できません。

只、残念ながら今回のウクライナにおける戦争では武力をもって正義とする人道上許されない行為が起こってしまいました。予測不能な戦争状態にあってはブランドを含めてすべての関係者が安全保障を何よりも優先していかねばならないと思います。そして今こそ日本のブランドは平和と思いやりの精神を持って活動すべき時が来ているのではないでしょうか。

f:id:bbmedia:20220325115834j:plain