Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

サービスとしての広告

この2,3年でほとんどのタクシーで動画広告が見れるようになりました。最初のうちは目新しくてつい見てしまいましたが、最近ではモニターをOFFにすることも頻繁にあります。何故そうなったのか、タクシーの場合は座席に座って走り始めるとすぐに広告がちょうど目の前に音声とともに再生されます。逃げ場がありません。何回も同じ広告を見せられるのは大概の人にとって煩わしいのではないかと感じます。

「優れた消費者体験をどう作っていけば良いか」というすべてのマーケターが持つ課題の点から見ても嫌われる広告はマイナスです。すでに昨年来デジタル広告の世界では追跡型広告ができにくくなり、まもなくCookieの消滅とともに従来のターゲティング広告は終わりを迎えようとしています。デジタル広告において「過度な広告出稿はせず、リターゲティングもしない。リターゲティングは店を出たお客に買わなかった商品を押し付けるようなものだ」とロレアル社のシーナン・リード氏は述べています。実際に同社は1つの広告を見せるのは一人につき1か月で10回まで、ポップアップ広告には出稿しないことを目指しているとのことです。

ロレアル社が掲げているのはサービスとしての広告(Advertising as a service)という考え方です。ユーザーに嫌われるような広告体験をさせないというだけでなく、ユーザーのブランドに対する興味・関心をブランドにとっての贈り物としてとらえ、その贈り物に応えるような、心に響く関与性と魅力あるメッセージを作り届けていこうとするアプローチです。2020年に全世界で展開した「スタンドアップ」(女性が町中で受けるハラスメントに立ち向かう方法を描いたキャンペーン)や長年のコピー「私にはその価値があるから」の現代版広告はその例です。

Aaasという理念は今後より広がっていく気がします。そもそもブランドコミュニケーション活動において消費者にとって安全で、プライバシーを保護して、よりよい体験に結びつける方向に進んでいくのは当たり前です。パンデミック中に広がっているスクリーン疲れからライブイベントや印刷媒体の定期購読増加も見逃せません。ブランドはこうした流れを新しい機会としてとらえたほうが良いと考えます。