Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

AIと美しい書店

AI(人工知能)がマーケティングの世界に本格的に入ってきました。まずはマーケティングにおいてAIがどんな領域で役立つのかをみてみましょう。もっとも多くのマーケターが使えるのはデータから暗黙知を引き出して予測をすることです。天気や行事によって変わる販売予測などは最たる事例です。次は自然言語処理、こちらは膨大な人の会話や文章をデータベースとして分析・理解することで検索エンジンテキストマイニング、自動翻訳などに利用されます。3番目はコンピュータビジョンと呼ばれる映像・画像データ解析の技術です。自動運転や人の表情分析、AR・VRにつながリます。これらの3分野においてAIは顧客と接しながら集まった顧客のデータを分析し、そこからマーケティングに役立つ何らしかの出力(output)を導きます。

ブランドがAIをマーケティングに役立たせようとする時、考慮すべき点があります。その一つは出力(output)のタイプとレベルです。1番目は「教師あり学習」と呼ばれるものです。正解をあらかじめ人が教えておいて履歴データから予測を行うもので実はAI以前からあったのですが、極めて高性能になりました。2番目は「教師なし学習」、こちらは顧客データの中に自然発生している集団やセグメントを見つけ出すものです。このタイプのAIが今後しばらくブランドが効果的なマーケティングを目指す上でとても重要になるかと思います。最後は「強化学習・自己学習」と呼ばれるAIです。自分で調べてデータを作り、その過程でさらに自己学習しながら、インサイトの発見を手助けするAIです。こちらはまだまだこれからですが、AI主導型のクロスセルやアップセル、見込み客の誘導などもできるようになるかもしれません。

マーケターにとって自分自身の顧客やブランドにふさわしいAIテクノロジーを選択できる時代がやってきました。このことは喜ばしいのですが、AIはあくまでもツールです。使い方次第で出力(output)のレベルは違ってきます。先日もクライアントの方とAIについて意見交換した際、「データの質が悪いせいかまだまだ頓珍漢な結果が出る一方、優秀なマーケターの意思決定をデータ化する方が精度が高いと感じる」というお話をお聞きしました。それでもAIは文字を書いたり話したりすることがどんどんできるようになり、いくつかの作業や業務はAI主導型の意思決定に置き換わっていくでしょう。

一方でAIは3歳児ができる創造的な思考ができないと言われます。優秀なAIであっても知性を持った人間ではありません。私たち人間は生まれつき精霊信仰があって、山や森、そして自動車やロボットにさえ「主体」を見ようとします。しかし、AIは人間のような好奇心や冒険心、ましては恋心などを持っていません。逆に言えば、マーケターはAIができない意味や本質を深く考えることやより抽象度の高い課題に対して積極的に取り組む姿勢を持つことが何より大切です。物事を幅広く、時間・空間を乗り越えて捉える情報リタラシーも鍛えねばなりません。

だいぶ前のこと、イギリスのガーデイアン誌が「世界で一番美しい10の書店」のリストに京都一乗寺の書店恵文社を選びました。書籍や日用雑貨、そして小スペースながら別棟にイベントスペースもあるとっても素敵な本屋さんです。ここで買った本は特別な出会いだったような記憶があります。美しい書店という発想は人間らしいなあと改めて感じます。