Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

「人」から「人類」へ

昨年米国ニューメキシコ州で2万3千年~2万1千年前の人類の足跡が発見されました。研究者たちは足跡が見つかった堆積層に含まれる種子の年代から特定したそうです。今年のノーベル生理学医学賞はドイツのマックス・プランク進化人類学研究所スバンデ・ペーボ教授が受賞しました。ネアンデルタール人やデニソワ人に関する研究から人類の進化や躰の仕組みを解明した功績に与えられたものです。今まで進化学の分野ではノーベル賞はとれないといわれてきたそうです。「人類=生物種としてのヒト」のイメージからそろそろ脱皮する時がきている?「人」から「人類」に目線をずらしてみたら価値観はどう変わるか?とても興味深いテーマと感じています。

現代において成功している多くのブランドはブランドポジショニングについて理解することに力を入れています。さらに顧客に対して素晴らしい体験を届けようという動機を強く持っています。ここまでは優れたブランドの共通の特性です。一方で自分の感情を制御し一貫性をもって他とかかわる力を発揮しブランドが信頼と誠実性をもって行動できるかどうか、この点においては成功しているブランドでも能力が低い事例が少なくありません。昨今のブランドパーパスはこうした自己制御ともいうべきブランドの能力を高めるのに役立つ気がします。

ブランドパーパスは社会と顧客に「何らかの幸せ」をもたらすことに根ざしています。そのためにはブランドが奉仕する相手についての理解を深め、常に重視する価値観を把握しなければなりません。かつて顧客のみに焦点をあてるだけでよかったことが社会を意識せざるを得なくなったのは顧客自身の価値観が変わったからです。サステナブルはまさにそのひとつです。Z世代やミレミアム世代にとって関心が高いことは多くのマーケターが承知していますが、どのように理解・実践しているのか、自分の考えとして表明しているのか、それとも世の中の流れとして是認しているのか、掘り下げて理解しているかと言えば足りていないようです。顧客の価値観と足並みをそろえるかもしくは顧客の価値観に気づきを与えられるような共有価値をもって自社のブランドストーリーを伝えれば効果は大です。そのためにブランドは自身の仮説や偏見をオープンにして顧客の意見を聞くことが大切です。SNSはもちろん偏りのない意見にも目を向けて顧客や社会との共有価値を作っていく必要があります。

ブランドは「ちょっとした嬉しさから深刻な悩みの解決」まで便益の提供を通じて人々の日々の幸せに貢献してきました。これからも環境変化から生まれるニーズは無限です。モア・イズ・ベターからレス・イズ・モアの価値観の移行もそのひとつです。より手強い課題に対しては共有価値の力を強めなければなりません、「人のため」だけでなく「人類のため」の目線を持つにはどうするか、ひとつの答えは普遍的な価値の探索とそれを高める努力にあると思います。