ちょっと変なタイトルですが、今回はかつて開高健さんが書かれた文章の一節を取り上げてお話をしたいと思います。「創造力と知恵」:広告王デビッド・オグルビー語録(すでに絶版)という本があります。もう20年以上前に読んだ当時はオグルビーって凄いなあと思うと同時に広告ビジネスに胸躍るワクワク感を抱いたことを思い出します。
さて、この本の監修をなんと開高さんがなさっていて「序の序」の中でこんな文章を書かれています。
文案家の当時の私が感服したことを、ヒトラーのわが闘争から引用することにします。ヒトラーのわが闘争は、いうまでもなく、半自叙伝兼ナチス思想の宣伝書なのですが、その政治プロパガンダについての解説の部分が、宣伝の本質をついているのです。こういう言葉があります。「大きな嘘のなかには人をして真実と信じ込ませる何かがある」。「大衆は女に似たところがある。あれかこれかと選ばせてはいけない。どこかひとつをとりあげて、これだと徹底的に叩き込むことである」、、、
時代は変わったけれども今にも通じる部分があるような気がしますね。いつの時代も同時代性の中で焦点をひとつに絞って徹底的に訴求することは人の心を動かします。一方、少数の人を長く騙すこと、もしくは多くの人を瞬間的に騙すことはできても、多くの人を長く騙すことは決してできないと思います。私はヒトラーのわが闘争の話を思い出す度にそんな風に感じています。