Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

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植福の教え

先日、大学のゼミの親しい先輩・同輩の集いがありました。メンバーは会社の経営者、大学の先生、企業のブランドマネジャーといった諸氏。在学当時から今を想像することなどまったくできなかったのですが、ありがたいことに結果としてもう30年近いお付き合いになります。ゆっくりと食事しながら集まるのは久しぶり、私は生まれ年では最年少なのですが、気遣いをせずに議論できる素晴らしいひとときでした。

話が盛り上がりこれからの人生、お金の使い方についての議論になった時、M先輩が幸田露伴の「努力論」の一節をもとにとてもいい話をしてくれました。この本はもともと人生の明暗、幸不幸をいろんな角度から検討し、どうしたら明るく伸びやかな気分を持って生きられるかの書です。何故こんな書を露伴が書いたかは明治の終わりから大正にかけて、事業の不成功や失業、志が遂げられないとか貧困とかから世の中が荒んでいたのでしょう。何やら現在と似ている気がしますね。

さて、露伴の人間観察は周到で「福分」の多い人を分析し、そこから人が「福」を得た時どうすべきかを説いたのです。すなわち、惜福、分福、植福をもって幸福三説としたもので露伴のオリジナルです。「惜福」とは福を惜しむこと。福を使い果たしてしまわないこと。「分福」とは自分の得た福を他人に分け与えること。「植福」とは福を植えること。植えられた福は徐々に成長して社会の発展に貢献する。というものです。これを「お金」に置き換えれば、利益が上がったり、ボーナスが増えても全部使わず無駄遣いしない、お世話になった人々や廻りに還元する、そして次の成長のためにお金を投資する、と言えるのではないかと思います。特に露伴が三説の〆に植福をおいた訳を考える時、中野孝次氏はこの書の題名を「幸福論」にせず「努力論」にしたかがわかったと述べています。幸福とはあくまでも一個人の心に関わることに対し、露伴が理想としたのは人々に幸福をもたらすものでなければならないという思いと想像したのです。三福のうち特に植福には勇気が必要ですが、決して忘れてはならないと思います。