毎年もっとも世界で称賛される企業ランキングを発表しているフォーチュン誌に、「発明とは何かを新しく作り出すことだが、イノベーションというのは何か利益になるものを新しく創出することであり、それを消費者に届ける道筋を見つけることだ。」と書かれていました。なるほどと思った次第。
たとえば、FedExは昨年「スマートパッケージ」という商品を導入したそうです。これは人間の臓器のような非常にデリケートな物品を運ぶために使われるパッケージで、ネットワークと連動し、送り主と受け手の両方が常に場所を追跡、気温や湿度を計測、もし損傷があれば警告を受け取ることができるというもので、この技術はFedExラボで生まれたとのこと。日本のアマゾンが始めた「お急ぎ便」もネット販売の弱点を発見してスタートした小さくとも立派なイノベーションだと思います。
また一方、ビッグなイノベーションであっても当初は懐疑的であったものも多くあります。トヨタ社長の渡辺捷昭氏は「我々が2000年にアメリカでプリウスを発売した時点では、ガソリンはわずか1ガロン1.30ドルだった」、「業界観測筋の多くは、低燃費と低排出を主な売りとする車がアメリカで売れるかどうか、疑問を抱いていた」と述べています。実際ハイブリッドカーを最初に市場に出したのはホンダでしたが、一番成功しているのはトヨタであり、こんにちまでにプリウスは180万台販売されています。トヨタの場合は経営者の先見性と英断があったのですが、私も発明の発想とイノベーションの発想にはどうも違いがあるように思います。もちろん、よいアイデアであってもイノベーションとして成功するわけではありません。
しかし、イノベーションなくして企業の発展がないことは事実です。アメリカン・エキスプレスCEOのケン・シュノールト(Ken Chenault)氏は、「経済環境が厳しいときこそ、引き下がるよりもイノベーションへの投資を増やす必要がある」と述べています。「上層部からだけではなく、全社的に素晴らしいアイデアが集まることを期待している」としてシュノールト氏は数ヶ月前に、自社事業を長期的に変質させていくための社員のアイデアを補助する5,000万ドルのイノベーションファンドを立ち上げました。優れたイノベーションは私たちのようなクリエイティブサービス業でも十分生まれる可能性があります。冒頭の事例にあったように技術や製品だけに限った言葉ではないのです。クライアントがどんなサービスを求めているのか、自分たちでその中でできそうなことは何か、それをどうやったら実現できそうか、何もかもはできないかわりに誰でも何かひとつは小さなイノベーションを生み出せるのではないでしょうか。日々の仕事もそういう発想を持って取り組めば、より仕事も楽しくなるに違いありません。