Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

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無限幻想

最近読んだ本に「大丈夫な日本」というのがあります。これから日本はどんな国になっていくのか、我々は何を目標に国づくりを行うべきか、、、というのがテーマなのですが隠れた本題は「無限」から「有限」という大転換ではないかとの感想を持ちました。中国やインドの大人口の国々がアメリカや日本のような物質的に豊かな生活を送るには地球はもはや狭すぎる。資源・環境の両面から地球は今後相当悪化していくことは明らかですよね。40年前に読んだ鉄碗アトムの最終回のような破滅もこのままではいつか起きるかも知れません。自分も含めて近代の人類は昨日より今日のほうがよりよい社会・政治・経済・生活が実現するという見えない常識のもとで暮らしています。それが21世紀初めてそうではない前提で考えなくてはならない世の中になるのではないかということです。今日が昨日より良い日であるという「進歩と発展」の意味をもう一度考えていく必要があるような気がします。しかし、こうした覚悟は相当難しいでしょう。

ここで本の中にあった森鴎外歴史小説「じいさんばあさん」の紹介文を引用しておきます。文化6年(1809年)春、麻布龍土町の、とある大名屋敷の敷地内にある空家に老夫婦が越してきた。さして裕福とはみえないけれど、このふたりの仲のいいことは無類で、近所の人が、もしあれが若い男女であったら平気でみては居られない、というほど。ところが、この夫婦は37年ぶりの再会だったのです。上方に詰めることになった弟が病に倒れたため、臨月になっていた妻るんを残して兄の伊織が代役で京に赴くことになった。ところが赴任そうそう酒の席でのささいな揉め事で同僚といさかいになり、伊織は刀を抜いて相手を殺めてしまう。その罪で知行を召し上げられて、越前に長きにわたってお預けの身となります。るんとともに残された一人息子は5歳の時に疱瘡で死去。ひとりぼっちになったるんは御殿女中として、こちらも長き武家奉公に出るのです。そして、俊老いて隠居を許されたるんのもとに、37年ぶりに伊織がお預け御免となって江戸に戻り、再会するというお話です。

江戸時代というのはきっと厳しい身分制度封建制度にあってとても息苦しかったと今から見れば想像できます。でもそこにも現代人が得られない「安らぎ」「満足した幸せ」があったに違いありません。