六本木のミッドタウンにあるサントリー美術館で「マイセン磁器の300年」を見てきました。美術館はいつも駆け足なのですが、陶磁器が好きなせいか今回は一緒に行った同伴者を待たせてしまいました。会場も土曜日夕方ということでセンスのよい女性のお客さんを中心に多くのマイセンファンが訪れていました。
300年前というと日本では徳川5代将軍綱吉の時代、当時は景徳鎮や伊万里といった東洋の陶磁器が西洋で人気を博していたんですね。ザクセン選帝侯兼ポーランド王の「アウグスト強王」(1670-1733)も自ら大ファンであったとのこと。そしてそれまで西洋で謎とされてきた磁器の製法を錬金術師のヨハン・フリードリッヒ・べトガー(1682-1719)に解明させ、1710年王立磁器製作所の開窯をもって歴史上比類なき300年にわたるマイセンの幕が開いたのです。白磁に先立ち発明された「ベトガー(せっき)」から、東洋の憧れを物語る柿右衛門写しや「シノワズリ(中国趣味)」、王が夢見た壮大な磁器の離宮、優美なロココ様式から万国博覧会の記念碑的な大作を経て、アール・ヌーヴォー、アール・デコ期の傑作など、各時代の様式と変化対応を実感できます。
長い歴史の中においてもちろん衰退の時期があったのですが、それを乗り越えてきた迫力がそこにありました。常に最先端の美術様式を取り入れながら、現在もなお続く"生きた窯"の手仕事の粋を保っている姿に触れ、「偉大なブランドとは」を感じるとともに全てに通じるエッセンスを得た思いです。