花屋さんの店先にシクラメンが並び始めるとカレンダーの最後のページをめくる頃となります。コロナの新規感染者が劇的に減ったせいか、シクラメンの華やかさも殊の外増した気がします。
かつてドラッカーは企業の目的とは「顧客創造」であり、社会の変化とともにイノベーションを起こし、マーケティングを駆使して、新たな顧客を創造していくことである、だからこそ企業にはマーケティングとイノベーションという2つの基本機能が必要と述べていました。しかし、いつの間にかマーケティング機能は細分化されて、ブランドや生活者に対する真の視点を見失って従来型のマーケティングは輝きを失いました。「マーケティングは今存亡の危機にある」とはマスターカードのCMOラジャ・ラジャマナー氏の今年2月に出版された新著Quantum Marketingの中にあった言葉です。グローバルの多くの企業でCMOの肩書がなくなったり、マーケティングがビジネスを成長させるかについて従来よりも懐疑的になったり、マーケティングが時代遅れになっているとか。確かにマーケティングが本来の機能からずれて行われているような気がします。
たとえば、小売業などが長年やってきたロイヤルティプログラム(会員制度)を見てみましょう。デパートや専門店のカードやアプリなど、どれをとっても値引きだったりポイント付与だったり実質は単なる割引制度です。その結果、同じ市場にいる競合ブランドがそろって行うことでロイヤルティプログラムだらけになっています。これではもはやマーケティングとは呼べません。差別性がなく茹で蛙のような状況です。そうした中でパンデミックが起きました。ご存じのようにEコマースが一気に広がり、店頭体験で感じるブランド価値が失われてしまいました。
米国小売業界では顧客履歴の重要性の高まりなど上記以外の要因が連鎖してロイヤルティプログラムのアップグレードが進んでいます。ドラッグストアチェーンのウォルグリーンは昨年末会員プログラムを刷新しました。新しいアプリによって一律のサービスから顧客・コミュニティ・患者のニーズに合わせたパーソナルなサービスを提供できるようになりました。歴史あるデパートのブルーミングデールズでは小売りのクレジットカードを作りたがらない顧客に対して決済方法を問わないシステムに変更し、無料の優先配達やバーチャルショッピングイベントへの無料招待、インスタグラム投稿を通じた商品先行予約など買い物客との強い関係性構築に力を入れています。
マーケティングの新しいモデルではWEB・店頭・アプリなどあらゆる顧客とブランドの接点において一貫性のある内容を提供していかねばなりません。データとテクノロジーを活用して、個々のニーズに合わせたユニークな体験や特典を作れるようになった今、マーケティングを顧客中心に再統合していく流れは活発化すると思われます。
そういえば長年シクラメンを購入していた写真のお店では一昨年まで誕生月にポイントが2倍貰えていたのですが、代替プログラムもなくポイントカードを廃止してしまいました。寂しいなあ~。