Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

砂糖菓子の正体

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もうすぐ春ですね。今回は直近コロナ禍の2年間にわたって最も世界でダウンロードされているアプリの話を取りあげたいと思います。その名はTikTok、アクティブユーザーが10億人を超え、現在の市場時価評価額は12兆円に達しています。すでにYouTubeTwitterFacebookinstagram、LinkedIn、Line、PinterestMyspaceGoogle+, Tumblr, VINE,  ,  ,  SNSにおいて優勝劣敗の結果が出たようにも見えましたが実はまだだったようです。むしろFacebookなどのビジネスは時代遅れになるかもしれません。

若い人たちを中心にユーザーが増え続ける中毒的魅力をもったTikTokをどうすればうまく活用できるか、多くのブランドがすでに広告を出したり、アカウントを取得して商品を発表したりし始めています。マス広告で若者にリーチできにくくなった中、今後さらに新しいアイデアやクリエイティブが生まれることでしょう。TikTokのユニークさの一つ、なぜコロナ禍でこれだけ伸びたのか、それは明るい、エンタメ、楽しい、元気の出る、踊りや音楽のコンテンツに今のところ溢れているからかもしれません。

TikTokの特徴を語る際、最大のポイントは従来のSNSソーシャルグラフ中心であるのに対してTikTokはコンテンツグラフ中心の考え方を持っているという違いです。ソーシャルグラフ企業は検索を基本としてユーザー同士の関心を結びつけ育てていきます。一方、コンテンツグラフ企業のサービスはユーザーの結びつきの構築よりもあくまでもユーザーを楽しませること。ユーザーの大量なデータを利用してユーザーの脳がもっとも喜ぶ砂糖菓子の食べ放題状態を作りあげます。Youtubeなど従来のSNSはリコメンデーションはあるものの基本はユーザーが自分で検索して次に見るものを自分で決めるのに対してTikTokはスワイプするたび次のコンテンツを目の前に提示してくれます。秒数が短いので飽きません。ソーシャルグラフの場合「いいね」やクリック数やコメントのようなエンゲージメントが投稿者自身のフォロワー数と一致する可能性が高いのですが、TikTokでは一人もフォロワーがいなくても、初めて投稿した動画でも大ヒットすることがあり得ます。

こうした違いを生じさせている秘密は何でしょうか、それはTikTokのコンテンツをユーザーに薦めるエンジンとなっている独特のアルゴリズムにあると言われています。ユーザーの一時停止や最後まで視聴するかなどをAIで分析し類似ユーザーのデータをもとに気に入りそうな動画を提示しそれを繰り返しながら精度を高めていきます。このアルゴリズムがユーザーの行動を見張っているので知らず知らずのうちに偏った動画ばかりが配信される傾向は他のプラットフォームより強いと言えます。AI時代のSNSと呼べるでしょう。

TikTokに限らずアルゴリズムはAIの進化によって今後より力をもつと考えられます。人間の欲望を助長させるとともにアルゴリズムで思考過程を形成された世代がこれから大人になっていきます。イアン・ブレマー氏によれば、「アルゴリズムは模範的な市民を作ろうとはしない、人間をお金の面で意味のあることに仕向けていく」とAIやアルゴニズムが分断の手段となりうることを警告しています。ブランドはここでも常にユーザーを守ることをはじめとして負への備えをしておかねばなりません。

話は変わりますが、今ウクライナの情勢を見ていると歴史は繰り返すという重い教訓と何がファクトかわからない情報撹乱、サイバー攻撃などテクノロジーによる新しいリスクを感じます。これから先、東アジアで同様な事態が起きてもおかしくないという恐怖とともに戦慄が走ります。平和を祈るばかりです。