Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

紙から思うこと


先月GWを利用して約3年8か月振りの米国視察に行ってきました。今回のニューヨーク出張を数えるともう20回以上となります。訪問日の翌朝はいつも朝4時に起きてホテルの部屋でTVをずっと見ます。半日見ているとおおよそ現地の雰囲気、話題、広告トレンドなどを掴めるからです。もうひとつ朝のニュースが一段落する7時半すぎになるとホテルのロビーに降りてコーヒーと果物、それと新聞を買って部屋に戻り朝食を食べながら新聞に目を通すのがルーティンでした。「でした」と言うのは今回できなかったからです。ロビーの売店の新聞コーナーがすっかりなくなってしまいました。紙の新聞が廃止に近づいている、、、一抹の寂しさとともにコロナ禍の空白期間の長さを改めて感じた次第です。

さて、一方で新たな復活の動きも見られました。日本では過去20年間で本屋さんが半減したと今朝のNHKニュースでも報じられていましたが、米国の最新の兆候として大型のリアル書店が復活しつつあります。最大チェーンのバーンズ&ノーブル(B&N)はアマゾンをはじめオンラインとの競争に苦戦し、2014年のピーク時に比べて100店舗以上減りました。当時業界2位だったボーダーズは経営破綻に追い込まれました。しかし、B&Nは今年なんと店舗数を30店舗増やす計画だそうです。コロナによって多くの人々が家に閉じこもり書籍に目を向けるようになったこと、閉店中に行った店舗の改善や在庫の見直しを行ったことが追い風となりました。最近オープンした迷路のようなわくわくする造りをもった新店舗はかつての大型チェーン店の標準的なスーパーマーケット風レイアウトと明らかに異なっています。

リアル店舗の価値は本屋に限らず上昇しています。米国では小売業側の強い需要と近年のショッピングセンターの新設低迷によって空き区画が減少し、今年1~3月期の平均賃料は過去最高となったと言われます。2010年オンラインの眼鏡販売からスタートしたワービーパーカーは現在総売り上げの60%がリアル店舗から生じています。店舗の開設に際してオンライン業者は顧客の住所や勤務地が100%わかっているので、来店客の位置情報や来店頻度を分析し、きわめて高い精度で新店舗を開くべき場所を特定できるようになりました。もちろんリアル店舗を以前から持っている企業も多くはオンライン販売に乗り出しているので同じことが言えます。データによってオムニチャネルの相乗効果が明らかに高まったのです。また、リアル店舗に来店したお客のほうがネットよりも1件あたりの購入額が多く、リピート率も高いことも確認されています。買い物の便利さだけで見ればデジタルは圧倒的に強いと言えますが、買い物の楽しさや満足の点ではリアルに敵わないことがパンデミックを終えて改めて明らかになりました。

話しを書籍に戻したいと思います。書籍は今、紙・電子・読み聞かせ・ARという手段で楽しむことができるようになりました。これもまたデジタル・テクノロジーのお陰です。日本では紙の書籍はまだ減りつつあるようですが、2021年のデータながら米国市場では紙の書籍販売が8億2800万冊、過去最高となったのは驚きです。紙の書籍は人生にとっての宝物の発見にとどまらず、デジタルでは味わえない価値が潜んでいるのかもしれません。