Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

二者択一からの脱皮

「ガソリンスタンドの自動洗車機で車を洗うと傷がつく?」と思っている人はまだ多いのではないでしょうか。今の最新鋭の洗車機はブラシが改良されただけでなく、車の形状を読み取るセンサーや制御能力が向上したので車に傷がつくことはないようですが、昔の洗車機はナイロンやプラスチックに近い硬いブラシが使われていて目に見えるかどうかの細かい傷がつきました。雨や汚れをとるために自動洗車を長年何回もするうちにボディそのものにだんだん傷がついていったわけです。実は同様のことがブランドでも起こっていると感じます。新聞のチラシで「初回申し込みに限り5000円が1000円」とか、「本日特別に定価の40%引き」とか、「今週の特売で250円が198円、お一人1本限り」とか枚挙にいとまがありません。こうしたプロモーションは一時的に売り上げを作ってくれます。しかし、多用しているうちにブランド価値をだんだんと毀損していくことになります。

過去20年以上にわたってマーケティングでデジタルが主流となってきた中、企業から消費者へのアプローチで登場したのがパフォーマンスマーケティングです。サードパーティのチャネルを利用してキャンペーンを実施して、そこから購買、リード、クリックといった結果に対して発生した分で料金を支払うという考え方です。ターゲティングによってクリックしやすい人にバナー広告を送るなどが典型です。ここではROIを測定することが可能です。実際に購買まで追えるので無駄な広告費を抑える効果があります。しかし、これもまた長期で見るとブランド構築の足を引っ張っている可能性があります。パフォーマンスマーケティングは売上、リード、クリックの短期的な効果は測れてもブランド構築への効果や影響は把握できないからです。

一方、従来からずっと続いているブランドマーケティングは「認知」とか「好意度」せいぜい「購買意向」といった指標しか存在せず数値で表しにくい弱点をもっています。短期の結果が出なくてもブランド構築は長期的投資であるということで計測を免れてきました。ブランド広告は大事と言いながら不況になると減らされるといったことが起きるのはやはり効果が見えにくいからだと思います。多くの企業やブランドはプロモーションに近いパフォーマンスマーケティングとブランドマーケティングは二者択一と考えていてマーケティング予算を奪い合っています。

元P&G社のCMOだったジム・ステンゲル氏とペンシルベニア大学ウォートン校のランバートン教授らはブランド構築とパフォーマンスマーケティング両方の究極の目標はブランドエクイティの成長だと定義しています。ブランドエクイティの測定方法は企業やブランドによって異なりますが、ここでアップデートされた重要な要素を改めて紹介するとfamiliarity  regard  meaning  uniquenessの4つです。そしてさらに重要なことはこれらの4つが組み合わさってブランドに対する感情となることです。人の意思決定を解き明かす神経経済学でこうした感情が人の意思決定の90%以上を決めるという分析もあるようです。上記のメンバーの研究によるとブランド構築とパフォーマンスマーケティングの効果をブランドエクイティに照らした絶対的な指標として把握して、それを売上・株主価値・ROIとリンクさせることでそれぞれに予算を投じるべきタイミングや規模を迅速に判断できるようになると述べています。

とても興味深い着眼点かと感じます。