Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

ポジショニングの父

「大西洋を最初に単独飛行したのはリンドバーグ、では2番目は誰でしょう?ほとんどの人は答えられません」という一番手の法則(The law of leadership)に始まる「マーケティング不変の22の法則」の著者アル・ライズ氏が95歳で先月7日にこの世を去りました。共同著者だったこちらも有名なジャック・トラウト氏は5年前既に亡くなっています。私がこの本に出合ったのは1993年でまだ翻訳本がなく原書だったため完璧に理解できなかったのですが、当時の衝撃は大きく、胸がときめいた覚えがあります。まだ商品という言葉が中心だった日本の宣伝・マーケティング業界と比べてブランドを主語にしてスマートで直感的にわかるメソッドでした。翻訳されるまでの短い間、一部を訳してクライアントに紹介したりもしました。

アル・ライズ氏は1970年代に「ブランドベネフィットよりも消費者の心の中にブランドのポジションを築くことにフォーカスすべき」というポジショニングのコンセプトを打ち出しました。今ではポジショニングは当たり前のマーケティング用語となっていますが、当時の米国はプロダクトの時代からコンシュマーの時代へ移行の最中、日本は高度成長が続きまだプロダクト全盛でポジショニングは斬新な考え方でした。

ポジショニングから約20年後に出版されたマーケティング22の法則の方は市場の軍事的モデルとしてマーケティング戦争における攻撃と防御と迂回の原則とも言える本です。90年代後半に入るとマーケティングの世界はブランド戦略が主役になっていきます。ライズ氏は娘であるローラ・ライズ氏とともに「ブランディング不変の22の法則」という本も出版しました。5年前にライズ氏はインターネットとグローバルブランドの進展がもたらした決定的なマーケティングの変化について5つのポイントをあげています。1.広告よりもPRが重要 2.ブランドよりもカテゴリーが重要 3.戦略よりも名前が重要 4.視覚は言葉より重要 5.単一ブランドよりも複数ブランドの方が重要 と目から鱗の事例を取り上げながらいつものように歯切れ良く語っています。

アル・ライズ氏に対しては、反論も多くあり、業界の異端児と言われたりもしましたが、ブランドの本質を掴むよう努めて自分の意見を述べることに躊躇しませんでした。今から思うとアル・ライズ氏はブランドコンサルタントの先駆者であったかもしれません。「The first brand in the mind will win :心に開いた穴を見つけ、それを埋める最初のブランドになる」原則は多くの経営者やブランドマネジャーに強い影響を与えました。

「余計なものを排除して本質を煮詰める」はスタートアップはもちろんのこと、混雑したレッドオーシャンの市場からブランドが抜け出す有効なアプローチであることは今も変わらないと思います。