Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

リテールメディアが注目される理由

先日、かつてTVCMを含むマス広告の衰退の到来を警告した当時P&GのCEOであったエドウィン・アーツ氏の訃報に接しました。アーツ氏は29年前の1994年に行われた4A(全米広告業協会)のカンファランスで「DIGITAL WAKE-UP CALL」というタイトルの講演を行い、インタラクティブメディア、サブスク型メディア、ビデオゲームの台頭が広告付きテレビにもたらす影響について近い将来テレビ広告を利用した効率的なマスマーケティングができなくなる恐れを指摘しました。当時、P&Gは広告予算の90%以上をテレビ広告に投入し、ターゲットオーディエンスの90%に毎週6~7回リーチできていたそうです。そしてアーツ氏の予言は約30年経ってソーシャルメディアスマートフォンの普及までは想像できなかった一方でCTV(コネクテッドテレビ)におけるタイムシフト視聴やオンデマンド視聴に先見の明をもっていたことを証明しました。

時代は移りこのところ米国で飛びぬけて成長著しいメディアと言われているのが上記のCTVともうひとつ、リテールメディアです。膨大な購入履歴にもとづくセグメントで動画広告のターゲティングをずっと行ってきたアマゾンの後を追ってメディア事業に本格的に乗り出したのがウォールマートのような量販店とクローガーのような食品スーパーマーケットチェーンです。ウォールマートの広告ビジネス「ウォールマートコネクト」の直近の成長率はアマゾンを凌いでいるとさえ言われています。リテールメディアの裾野がさらに広がっている理由は小売業が買い物客のデータを広告主に提供し、CTV広告のターゲティングや効果測定を可能にしているからです。もちろん、小売業者はショッパーデータを自社のネットワーク以外に持ち出すことを禁じている場合が多いので複数の小売にまたがったキャンペーンはやりにくいのが現状です。

一方、最近では個人情報に留意した分析サービスを通じてブランドのファーストパーティデータとCTV視聴データベースと小売購入履歴をマッチングさせる技術が高まっています。また、リテールメディアの上位5社であるアマゾン、クローガー、ウォールマート、ターゲット、アルバートソンズはそれぞれ各社限定ながらCTV広告のターゲティングに乗り出しています。そんな中で昨年レッドブルとクローガーはCTV広告に購入履歴データを利用して売上増に繋がった事例を発表しました。レッドブルを買ったことはあるけれど数ヶ月間買っていない心離れした顧客、レッドブルを買う顧客が一緒に買っている商品を特定し、その商品を買っていながらレッドブルを一度も買ったことがない顧客の両方に狙いを定めたのです。

行き過ぎたターゲティングは効率ばかりを求めても限界があると言われる中でショッパーデータを利用して新たな顧客にリーチできる可能性があることはブランドにとって朗報です。