Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

400本

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今秋米国に取材に行った際、業界関係の方から異口同音に「テレビの番組の質が上がった」という声を聞きました。視聴者を惹きつけるコンテンツはやはりオリジナルでなければということで今年米国では400本以上の新テレビ番組が流れています。ハリウッドを抱えるLAがこのところ注目されている理由のひとつもコンテンツを作るうえでの才能にアクセスしやすいからです。

昔ならば、きっとその効果はしっかり視聴者の増加という結果となったでしょう。ところがオリジナル番組の大半は赤字を出していて、おそらく来年には現在放送中の番組の半分は消えてしまうとの予想が早くも出ています。オリジナル番組がテレビ局にとって過去に例がないほど重要になっている一方で成功の確率はますます低くなっているのです。

ちょっと前までは「コンテンツが大増殖してしまった」でした。そして今は「それなりに出来ているコンテンツに溢れている」状況になりつつあります。

原動力

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最近めっきり減った本屋での立ち読みですが、海外出張の前には今も必ず行います。先日も成田空港で「儲かる社長とダメ社長の習慣」という本が目に留まりました。中小企業3万社の社長を見てきた著者ができるとダメを対比させて「儲かる社長とは」の像を示すものです。自分はどっちだろうとそれぞれの項目で○×してみたところ、6対4で儲かる社長のほうに軍配があがったもののダメ社長の行動パターンが4割もあるのにはちょっと落ち込みました。

儲けること(PROFIT)は言うまでもなく企業存続の必須条件です。私たちが生きている資本主義経済ではなおさらです。経済学者レスターサロー氏によれば、資本主義経済を動かす原動力は、「欲」、「楽観主義」、「群集心理」の3つだそうです。確かにこうした考え方に対する警笛や批判もあります。成長と幸福の区別がつかなくなって真の豊かさを見失うというものです。

しかし、サロー氏の考え方は改めて今、会社の成長の原動力にも言えるのではないかと感じています。社会とともに企業が真の豊かさを目指す時、強欲、バブル、ブームに陥らず、一方で健全な原動力を弱めないよう「儲け」を追求しなければなりません。

1万→2万

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タイトルの数字は2013年から14年でニューヨークにおけるUBERの台数の変化です。ニューヨーク名物のイエローキャブはこの先減ってしまうのでしょうか?

一台の車も待たないタクシー会社、コンテンツをひとつも持たないメディア会社、一室も部屋を持たないホテル観光会社、どれをとっても今まで誰も試みなかったビジネスモデルです。ところがインターネットの初期に生まれたイーベイやアマゾン以降、ここにきて大増殖しています。これらの会社を見てみると似ている点がありますね。生活者同士をお互いのニーズをダイレクトに結び付けていること。もともと生活者が持っている資源を有効活用していること。三番目は生活者による健全な評価システムに基づいていること。また、徹底的な使いやすさの追求とスマホやアプリの性能が良いこと。そしてもうひとつが、瞬く間にグローバルに事業を展開しつつあることです。

一方でこうした新興テクノロジー企業が今、既存のビジネスに猛威をふるいつつあります。そして既存のビジネスに強烈なプレッシャーを与えつつあるのです。うかうかしているとあっという間にオールドビジネスになってしまう恐れを皆感じ始めているような気がします。どんな産業といえども安定はなく、「機会と脅威」が高まっているのです。

2015秋米国便り

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今年も取材を目的にニューヨークにやってきました。2000年から毎年続けているのですが、当初のころと比べて滞在期間は短くなりました。昔は忙しい広告業界の方にアポイントをもらうのに余裕が必要なことと、1年分まとめた課題を取材していたためです。今はより世の中のスピードが高まったことやデジタルマーケティングの範囲が広がったことでお互い頻度が高まりました。

ところでホテルにチェックインして最初に集中することは昔からいつも同じです。それは半日程度TVを見ること。朝5時からお昼前までだいたいお決まりの番組とテレビコマーシャルをチェックします。特に朝のニュースと情報番組でこちらの話題や雰囲気をつかむようにしています。

毎回すべて入れ替わった新作テレビコマーシャルを見ると常に新しい情報の刺激を感じずにはいられません。ミックジャガーの新番組から「若さは年齢ではない」という雰囲気が流れています。来年の大統領選挙候補を話題にしたお笑い番組は米国ならではですね。一方、公共メッセージも健在です。写真は「テキストメッセージは破滅を生む」とデジタル時代ならではの危険を警告しています。

スマートは複雑で混沌?

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「デジタルの発展がマーケティングにもたらしたものとはいったいなんだろう?」ふと考えてみました。生活者が圧倒的主導権をとったこと、マスマーケティングをピークアウトさせたこと、プラットフォームがビジネスを規定するパワーをもったこと、情報量を大爆発させたこと、グローバル化を加速させたこと、など枚挙にいとまがありません。

そして気付けばデジタルはもはや当たり前の時代となりました。現在13歳から24歳の米国人が毎日平均5台のネットデバイスを使い、それが東京オリンピックの年には倍の10台になるとのこと。スマートフォン、スマートホーム、スマートウォッチ、スマートTV、スマートウォッチなど、世の中「スマート」という言葉があふれています。

一方でいろいろな影響が出ています。たとえば、2013年から2014年で米国内のガムの売上げが11%も下がったそうです。思いもよらないことですが、スマートフォンが影響しているといわれています。クライアントが漠たる悩みを増す中でスマートな問題解決はより難しくなっています。

光明はいずれにあるのでしょうか。複雑で混沌の状況だからこそブランド自体がもっている本質を引出し、見つけることをシンプルにかつ明確にするスマートクリエイティブ(課題→アイデア→実行)に他ならないと思います。

TTPでなくOTTの話

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先週、グローバル動画配信の巨人(世界50カ国、6500万人)ネットフリックスが日本でサービスを開始しました。既にHULUを見ている人には驚きは少ないかもしれませんが、月額650円という金額とコンテンツや営業で日本企業と連携しながら開拓をすすめるとあって日本でどの程度加入者を獲得できるか注目すべきところです。

ところでOTTテレビという言葉をご存知でしょうか。テレビ線や衛星信号ではなく、インターネット経由でテレビコンテンツを届けるTVを意味します。米国では「テレビ局はそのうちストリーミングビデオ経由のアラカルト式サービスになる」という予想はもはや疑問の余地はないとのこと、どのくらいのスピードでどの程度の割合まで進むのか、さらに日本ではどうかとなるとまだこれからといえますが、こうした新しいサービス(Over The Top TV)はテレビ広告のモデルを変えていくことになりそうです。

広告表示がないTV,リニアテレビとほぼ同じ流し方のTV、エリアや視聴者の属性によってダイナミックな広告を流すTV、ネイティブ広告の考え方のようなコンテンツに広告を埋め込むTVなど、しばらくはいろいろなモデルが出てくるでしょう。OTTの世界は未知数だらけですが、確かなことがあります。それは新しいビデオ・エコシステムにおいて視聴者の時間の奪い合いがますます激しくなるとともにさらに細分化する可能性が高いことです。

その時、マーケターは何をすべきでしょうか?

ロイヤリティの逆転

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企業がブランド力を高めようとする理由は何かと言えば、第一に継続してそのブランドを買ってくれる、値引きなしで購入してくれるユーザーが増えて、結果として安定的な収益が得られるからです。

その指標のひとつがブランドロイヤリティです。これを高める手段としては、顧客ベネフィットの提供と良好なイメージやコミュニケーションによる顧客との関係性の構築がキーとなると考えられてきました。しかし、消費者が全てのコントロール権を握るようになった中でロイヤルティ(忠誠心)の考え方もシフトしなければならないのではという気がします。すなわちユーザーにブランドのロイヤリティを持ってもらうことから「ブランドのほうが自分に関心を払ってくれている」とユーザーに思ってもらえる体験を届けることへのシフトです。

たとえば、いつも使っているブランドが突然なくなった時のショックをなくしたり、柔らげることがこれからはもっと求められるようになると思います。