Brighten Brand Note - BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

BBmedia inc. 社長 佐野真一のブログ

2023年ブランドがやるべきこと

令和5年2023年が始まりました。今月ラスベガスで行われたCESではソニーグループの新しい宇宙ビジネスが紹介されました。超小型人工衛星のカメラから自由に宇宙や地球を撮影するサービスです。新年早々夢がふくらむような仕事のお手伝いが出来て嬉しい限りです。さて、今回は2023年のマーケティングテーマについて米国のレポートを読みながらいくつか自分なりにまとめてみました。

①不景気の中のマーケティング

まず一つ目は「不景気の中のマーケティング」です。過去の例から金利上昇のあとには必ず何らしかの不況がやってきます。米国では昨年から後退期に入ったといわれます。P&Gは経費と原材料価格の高騰を受けて昨年4月から2四半期連続でマーケティング支出を削減しました。長期的にはブランドとプロモーションに投じる比率が7:3,もしくは6:4あたりが効果的と言われています。昔から景気後退期には後者の比率が高まりますが決してブランド構築に投じる金額をゼロにしてはなりません。毎度のことながらマーケティングは投資だということです。また、今回の不景気はウクライナ戦争から生じた突然の経済的不安とパンデミック収束という楽観の空気がぶつかり合っています。ブランドは機敏に動くことがより求められます。

②ハイブリッドな生活者

今年マスクを外せる日常が戻ってくることを予想すると人々のイベント参加や外出は増えていくでしょう。人々はリアル会場でコンサートを楽しみながらスマホをかざしてさまざまな角度から同時に楽しみます。これからは体験と体験を混ぜ合わせる、インクルーシブに考えることがより重要になります。また、ブランドは押しつけ型ではなく、生活者が求める体験、オプトインの体験を作っていかねばなりません。基盤としてのUI/UXは引き続きレベルアップしていきますが、フリクション(摩擦)の中にはむしろ幸福に不可欠なものが入っていることにも気づき始めると感じています。

③ブランドは「何をして何をしないか」

今年のカンヌフェスティバルはすべての応募作品に持続可能性指標や炭素排出量の明示を求めるようになるそうです。すでに欧米ではメディアプランにおける炭素排出量がマーケターにとって大きな関心事になりつつあります。ブランドはメタバースやweb3をはじめテクノロジーの進歩にも適応していかねばなりません。しかし、ブランドにとってそれがオーセンティックな行動で真実でなければなりません。そうでなければ手を出さない。何をする場合でもブランドとしての健全な自己意識を持ち、それを持続していくことが肝要です。

100年前の1923年に目を転じてみると当時の日本は大正時代、第一次世界大戦景気が終焉し不景気に転じ、一方ドイツは天文学的なインフレに見舞われ、米国では日本人の移民に対して排日的な動きが高まるといった具合で激動の時代は今も昔も変わらないと改めて感じます。なんといっても9月に起きた関東大震災は東京・横浜に甚大な被害をもたらしました。

過去を教訓として「リスクをやみくもに恐れず、リスクを最小限にとどめる」努力を行って明るい一年にしていきたいものです。

 

新たな衝動買い



2022年も残り僅かとなりました。嬉しいこと、悲しいこと、楽しいこと、辛いこと、、今年もたくさんありました。人間は良い事よりも悪い事のほうが記憶に残りやすいからか昨年よりも変化の衝撃が大きかった気がします。

さて、明るいニュースの一つとしてコロナ感染者数は減らない一方で今年のクリスマス商戦は活気が戻りました。デパートのウインドウディスプレイを見ながら買い物を楽しんだり、期間限定のポップアップストアで商品を手にとって買ってみる人も街のあちこちで見ることができます。かつての衝動買い(思わず買ってしまう行為)の道筋はシンプル、特に購入意図を持っていないで店内を歩きながらふと目に留まったものをすぐに買ってしまうという具合でした。下の写真は贔屓のうつわやさんの店内ディスプレイ、雑然のようなそうでないような訪れるたび思わず手に取りたくなってしまいます。Eコマースが普及し始めたころはアマゾンで本を検索すると関連書籍が表示されて思わず買ってしまったり、関連グッズを合わせて購入する購買行動が始まりました。ストリーミングが普及しライブコマースが登場するとカリスマ定員がお勧めする最新ファッションがライブで紹介され、その場で買ってしまうという現象が起きました。いずれも衝動買いを誘発する手段と言えます。

米国のある調査によれば、ミレニアル世代のうち50%、Z世代の回答者では39%がソーシャルプラットフォームで買い物をすると答え、若い生活者ほどモバイル購入に対する安心感があるという予想通りの結果が出ています。ブランド側はこうしたソーシャル買い物客を逃さないための処方箋を講じる必要があります。商品基本情報やサービスを施したうえで①顧客が求める信頼できる推薦情報、②クリエイターの活用、③シームレスな購入プロセス、④分析で点と点を結ぶといった見込み客が刺激を受ける場所のできるだけ近くで購入チャンスをつくることが重要となります。特に若い生活者は既存のソーシャルショッピング体験に満足しなくなっているとも言われています。すでにインスタグラムは決済機能を改善してユーザーがアプリ内でそのまま買い物をできるようにしました。

限定商品の見逃し、買い忘れの恐怖、お得な買い物体験、これらのニーズは店頭購入であろうとEコマースであろうとソーシャルコマースであっても変わりません。新しい形で衝動買いをどのように促せばいいのかアイデアが競われます。

 

ポジショニングの父

「大西洋を最初に単独飛行したのはリンドバーグ、では2番目は誰でしょう?ほとんどの人は答えられません」という一番手の法則(The law of leadership)に始まる「マーケティング不変の22の法則」の著者アル・ライズ氏が95歳で先月7日にこの世を去りました。共同著者だったこちらも有名なジャック・トラウト氏は5年前既に亡くなっています。私がこの本に出合ったのは1993年でまだ翻訳本がなく原書だったため完璧に理解できなかったのですが、当時の衝撃は大きく、胸がときめいた覚えがあります。まだ商品という言葉が中心だった日本の宣伝・マーケティング業界と比べてブランドを主語にしてスマートで直感的にわかるメソッドでした。翻訳されるまでの短い間、一部を訳してクライアントに紹介したりもしました。

アル・ライズ氏は1970年代に「ブランドベネフィットよりも消費者の心の中にブランドのポジションを築くことにフォーカスすべき」というポジショニングのコンセプトを打ち出しました。今ではポジショニングは当たり前のマーケティング用語となっていますが、当時の米国はプロダクトの時代からコンシュマーの時代へ移行の最中、日本は高度成長が続きまだプロダクト全盛でポジショニングは斬新な考え方でした。

ポジショニングから約20年後に出版されたマーケティング22の法則の方は市場の軍事的モデルとしてマーケティング戦争における攻撃と防御と迂回の原則とも言える本です。90年代後半に入るとマーケティングの世界はブランド戦略が主役になっていきます。ライズ氏は娘であるローラ・ライズ氏とともに「ブランディング不変の22の法則」という本も出版しました。5年前にライズ氏はインターネットとグローバルブランドの進展がもたらした決定的なマーケティングの変化について5つのポイントをあげています。1.広告よりもPRが重要 2.ブランドよりもカテゴリーが重要 3.戦略よりも名前が重要 4.視覚は言葉より重要 5.単一ブランドよりも複数ブランドの方が重要 と目から鱗の事例を取り上げながらいつものように歯切れ良く語っています。

アル・ライズ氏に対しては、反論も多くあり、業界の異端児と言われたりもしましたが、ブランドの本質を掴むよう努めて自分の意見を述べることに躊躇しませんでした。今から思うとアル・ライズ氏はブランドコンサルタントの先駆者であったかもしれません。「The first brand in the mind will win :心に開いた穴を見つけ、それを埋める最初のブランドになる」原則は多くの経営者やブランドマネジャーに強い影響を与えました。

「余計なものを排除して本質を煮詰める」はスタートアップはもちろんのこと、混雑したレッドオーシャンの市場からブランドが抜け出す有効なアプローチであることは今も変わらないと思います。

「人」から「人類」へ

昨年米国ニューメキシコ州で2万3千年~2万1千年前の人類の足跡が発見されました。研究者たちは足跡が見つかった堆積層に含まれる種子の年代から特定したそうです。今年のノーベル生理学医学賞はドイツのマックス・プランク進化人類学研究所スバンデ・ペーボ教授が受賞しました。ネアンデルタール人やデニソワ人に関する研究から人類の進化や躰の仕組みを解明した功績に与えられたものです。今まで進化学の分野ではノーベル賞はとれないといわれてきたそうです。「人類=生物種としてのヒト」のイメージからそろそろ脱皮する時がきている?「人」から「人類」に目線をずらしてみたら価値観はどう変わるか?とても興味深いテーマと感じています。

現代において成功している多くのブランドはブランドポジショニングについて理解することに力を入れています。さらに顧客に対して素晴らしい体験を届けようという動機を強く持っています。ここまでは優れたブランドの共通の特性です。一方で自分の感情を制御し一貫性をもって他とかかわる力を発揮しブランドが信頼と誠実性をもって行動できるかどうか、この点においては成功しているブランドでも能力が低い事例が少なくありません。昨今のブランドパーパスはこうした自己制御ともいうべきブランドの能力を高めるのに役立つ気がします。

ブランドパーパスは社会と顧客に「何らかの幸せ」をもたらすことに根ざしています。そのためにはブランドが奉仕する相手についての理解を深め、常に重視する価値観を把握しなければなりません。かつて顧客のみに焦点をあてるだけでよかったことが社会を意識せざるを得なくなったのは顧客自身の価値観が変わったからです。サステナブルはまさにそのひとつです。Z世代やミレミアム世代にとって関心が高いことは多くのマーケターが承知していますが、どのように理解・実践しているのか、自分の考えとして表明しているのか、それとも世の中の流れとして是認しているのか、掘り下げて理解しているかと言えば足りていないようです。顧客の価値観と足並みをそろえるかもしくは顧客の価値観に気づきを与えられるような共有価値をもって自社のブランドストーリーを伝えれば効果は大です。そのためにブランドは自身の仮説や偏見をオープンにして顧客の意見を聞くことが大切です。SNSはもちろん偏りのない意見にも目を向けて顧客や社会との共有価値を作っていく必要があります。

ブランドは「ちょっとした嬉しさから深刻な悩みの解決」まで便益の提供を通じて人々の日々の幸せに貢献してきました。これからも環境変化から生まれるニーズは無限です。モア・イズ・ベターからレス・イズ・モアの価値観の移行もそのひとつです。より手強い課題に対しては共有価値の力を強めなければなりません、「人のため」だけでなく「人類のため」の目線を持つにはどうするか、ひとつの答えは普遍的な価値の探索とそれを高める努力にあると思います。

脱炭素の混迷

今から9年前、ニューヨーク、ブルックリンにあるFilm Biz Recyclingを訪ねたことがあります。ここは映画やTV番組で使用したセットや小道具などをリセールしたり寄付したりする組織として2008年に発足しました。ハリウッドの映画産業は当時撮影が終わるとそのほとんどがごみになるといわれていました。そんな中、販売・再利用・寄付という活動を通じて活動期間中に600トン以上の物品を埋立地から転換したといわれています。残念ながら訪問してからまもなく後の2015年6月、Film Biz Recyclingはその扉を閉じたと聞きました。

今、気候変動や環境破壊に関するニュースは暗くなる一方です。国内外でいろいろな取り組みや意識を変える活動が行われていますが、事態はあまり好転しているように思えません。そこには根本的な課題を見落としているような気がします。米国の非営利団体(Climate Neutral)の測定によると、3つの種類の炭素排出(企業が所有する施設または自動車から直接的に生じる排出、所有している施設でのエネルギー使用から間接的に生じる排出、サプライチェーンで生じる排出)のうち3番目のサプライチェーンからの炭素排出が全体のなんと90%を占めるとのことです。企業単独では効果は限定的で少なくとも業界全体、さらには業界を超えた活動が必須といえます。

環境負荷が小さいと思われがちなデジタルの分野でもビジネスが複雑化するにつれて炭素排出量に対する懸念が高まっています。驚くことに全消費電力の約10%がインターネット通信にかかわっているというデータもあります。研究者の推定によるとオンライン広告はそのうち10%なので世界のエネルギー消費の1%を占めることになります。確かにストリーミングによる動画視聴やコンマ数秒のオンライントレードなど、莫大なコンピュータパワーと通信スピードが必要になりました。今注目されているメタバースも然りです。このように炭素排出削減や環境問題については知られざる事実がまだまだありそうです。

米国の生活者は太平洋に浮遊するプラスティックごみを集めるとテキサス州の大きさの島になるとか、ガーナの海岸に廃棄された衣服の山が積み上げられているといったニュースに対して敏感になっています。日本でもエコバックを始めとして今後同様の動きが活発になりつつあります。炭素排出削減に向けて企業だけでなく消費者行動の変更が同時に進まなくてはなりません。ところが多くの生活者が問題に気付いていながら、解決策を実感できないという大きなジレンマを抱えています。

一方、ブランド側もパタゴニアのようなパーパスから環境保全を謳ったブランドは稀有としても、原材料、プロセス、ビジネスモデルをサステナブルありきを前提にした事業に変換するところもあれば、グリーンウォッシュといわれる見せかけのレベルのブランドもあるのが現状です。根本的な課題として環境改善にかかるコスト負担をどうするかという議論がなされていないことが原因です。イギリスの広告協会は「Ad Net Zero」と呼ばれるイニシアチブを主導して、2030年までに広告の開発、制作、運用に伴う二酸化炭素の影響をカーボンオフセットとエネルギー消費の削減の組み合わせによって、ゼロにする取り組みを検討しています。

サステナブルありきの生活者がどのブランドを選べばよいのか、ブランドのほうも気候や環境問題への意欲をどう社会に伝えればよいのか、解決のスピードをあげるためにはもう一歩踏み込んでいかねばならないと思います。

AIと美しい書店

AI(人工知能)がマーケティングの世界に本格的に入ってきました。まずはマーケティングにおいてAIがどんな領域で役立つのかをみてみましょう。もっとも多くのマーケターが使えるのはデータから暗黙知を引き出して予測をすることです。天気や行事によって変わる販売予測などは最たる事例です。次は自然言語処理、こちらは膨大な人の会話や文章をデータベースとして分析・理解することで検索エンジンテキストマイニング、自動翻訳などに利用されます。3番目はコンピュータビジョンと呼ばれる映像・画像データ解析の技術です。自動運転や人の表情分析、AR・VRにつながリます。これらの3分野においてAIは顧客と接しながら集まった顧客のデータを分析し、そこからマーケティングに役立つ何らしかの出力(output)を導きます。

ブランドがAIをマーケティングに役立たせようとする時、考慮すべき点があります。その一つは出力(output)のタイプとレベルです。1番目は「教師あり学習」と呼ばれるものです。正解をあらかじめ人が教えておいて履歴データから予測を行うもので実はAI以前からあったのですが、極めて高性能になりました。2番目は「教師なし学習」、こちらは顧客データの中に自然発生している集団やセグメントを見つけ出すものです。このタイプのAIが今後しばらくブランドが効果的なマーケティングを目指す上でとても重要になるかと思います。最後は「強化学習・自己学習」と呼ばれるAIです。自分で調べてデータを作り、その過程でさらに自己学習しながら、インサイトの発見を手助けするAIです。こちらはまだまだこれからですが、AI主導型のクロスセルやアップセル、見込み客の誘導などもできるようになるかもしれません。

マーケターにとって自分自身の顧客やブランドにふさわしいAIテクノロジーを選択できる時代がやってきました。このことは喜ばしいのですが、AIはあくまでもツールです。使い方次第で出力(output)のレベルは違ってきます。先日もクライアントの方とAIについて意見交換した際、「データの質が悪いせいかまだまだ頓珍漢な結果が出る一方、優秀なマーケターの意思決定をデータ化する方が精度が高いと感じる」というお話をお聞きしました。それでもAIは文字を書いたり話したりすることがどんどんできるようになり、いくつかの作業や業務はAI主導型の意思決定に置き換わっていくでしょう。

一方でAIは3歳児ができる創造的な思考ができないと言われます。優秀なAIであっても知性を持った人間ではありません。私たち人間は生まれつき精霊信仰があって、山や森、そして自動車やロボットにさえ「主体」を見ようとします。しかし、AIは人間のような好奇心や冒険心、ましては恋心などを持っていません。逆に言えば、マーケターはAIができない意味や本質を深く考えることやより抽象度の高い課題に対して積極的に取り組む姿勢を持つことが何より大切です。物事を幅広く、時間・空間を乗り越えて捉える情報リタラシーも鍛えねばなりません。

だいぶ前のこと、イギリスのガーデイアン誌が「世界で一番美しい10の書店」のリストに京都一乗寺の書店恵文社を選びました。書籍や日用雑貨、そして小スペースながら別棟にイベントスペースもあるとっても素敵な本屋さんです。ここで買った本は特別な出会いだったような記憶があります。美しい書店という発想は人間らしいなあと改めて感じます。

 

 

激流を和らげる術

 

つい最近の出来事ですが、病院の診察をオンライン予約して行ってみると自動キャンセルされていたことがありました。アプリで仮予約してから先方からの返信メールを開き、個人アドレスを入力して予約番号と予約完了確認画面も出ていたのですが、細かく書いてある注意事項を読まなかったことが原因でした。受付の人からけんもほろろに扱われて正直気分を害しました。確かに非があるのはこちらですが、、。ところが次に予約して訪問した際、予約画面のわかりにくさや予約完了のミスのしやすさを指摘すると「ソフトウェアの不備でボタンがうまく設置できておらずほんとうに申し訳ありません」と言われました。それは無理もない、自分たちにもよくある話と納得しつつ、さらに「最も混雑していない時間帯は週中のお昼前後ですから次回はそうされてください」と教えてくれると、印象は不親切→親切へとすっかり変わりました。

企業やブランドにとって不満を抱える顧客に緊張した状況をやわらげる方法を知ることはSNS時代において貴重なスキルです。そのためにまず基本的な考えを持つ必要があります。人の怒りはどこから生まれるのか、根本的には自分を守るための感情から生まれます。自分が大切にしている人・モノやコトが否定、侵害、誤解、無視、、、されていると感じた時に怒りが生じます。ということはまず何よりも相手の話を聞くことがスタートです。直ぐに弁明したり、誤解を正したり、解決策を提示するよりも相手の話を最後まで聞くことが重要です。

カスタマーサービスの教科書によく書かれているようにクレームのある顧客に対して問題が解決できなかった場合でも企業の誰かが自分の話を聞いてくれたと感じた時、問題がすぐに解決された顧客よりもブランドロイヤルティが高くなると言われます。にもかかわらず「相手の話を最後まで聞く」は意外と出来ていないのではないでしょうか。さらに憤慨となると一回の出来事ではなく、数回もしくは別のクレームが重なって引き起こされると考えておく必要があります。こうした場合、ブランドや企業側は「本当の問題は何なのか」を突き詰めることが肝要です。もちろん、怒っている人に接するときは言葉だけでなく非言語のコミュニケーションにも気を配らなければいけません。

コロナ禍に始まり、社会の混乱、気候変動による大災害、エネルギー危機や物価高騰、世界大戦への漠然とした不安といったムードは日常的ないらだちを増やし、穏やかな人でさえも短気にさせる状況を作り出しています。実際に米国では航空・ホテル・医療業界などの接客業に従事する人たちから「怒りの感情を持つ人が増えている」との報告があがっているそうです。

冷静に、丁寧に、尊厳や敬意を払えば,おのずと行動にも表れます。いずれにせよ、顧客との緊張した状況を和らげるには激流を無理に食い止めるのではなく、相手への理解、心の余裕と機転を用いて、ゆっくり迂回させていくほうが良い解決に向かう気がします。日頃から顧客の満足度に気を配って意見を聞きながら顧客体験を改善する活動もそのひとつです。